公開日: 2026.05.11 / 最終更新日: 2026.10.21

ShopifyでBtoB(卸売)サイトを構築する方法|費用と手順

ShopifyでBtoB(卸売)サイトを構築する3つの方式と費用感を比較。BtoB/BtoC構築の違い、会員限定価格・掛け払いなどの機能要件から運用設計まで実務目線で解説します。

机に立てた店舗の設計図とストア画面のタブレット、定規と積み上がった工程付箋が並ぶ構築準備の情景イラスト

ShopifyでBtoB(卸売)サイトを作る方式は、①パスワード保護で特定の取引先へ限定公開する、②BtoB向けアプリで卸価格や掛け払いを足す、③B2B on Shopify(Shopify標準のB2B機能)を使う、の3つです。費用はShopifyの月額料金に、アプリ利用料と構築・連携の作業費が加わる構成です。取引先ごとの価格パターン数、掛け払いの要否、基幹システム連携の有無で、方式と費用の規模が決まります。手順は、要件定義、顧客管理の設計、価格設計、決済・請求フローの設計、法人向けUXの整備、アプリ・外部連携の選定、公開前テストの7段階です。

ShopifyのBtoB構築がうまくいかない案件には共通点があります。要件定義を省いて構築を始めることです。BtoBは顧客ごとに価格・支払い条件・発注ロット・承認フローが違います。「誰に、何を、どの条件で売るか」が決まっていない状態でShopifyを触り始めると、公開後に例外処理が積み重なります。

背景には市場とShopify側の変化があります。経済産業省の調査では、企業間(BtoB)の国内EC市場規模は514.4兆円、EC化率は43.1%です(令和6年度 電子商取引に関する市場調査)。企業間取引の4割強が、すでにECで行われています。2026年4月には、Shopifyが会社プロフィール・支払い条件(掛け払い)・数量別価格などのB2B機能を、Shopify Plus以外のBasic・Grow・Advancedプランでも追加料金なしで使えるようにしました(Shopify Changelog)。これまで卸売機能にはShopify Plus(3年契約で月368,000円から)が必要でしたが、月4,850円(Basic・月払い)〜58,500円(Advanced・月払い)のプランで扱えるようになりました(料金は2026年10月時点の公式料金ページ)。中小の卸・メーカーがShopifyでBtoBを検討しやすくなった直接の理由は、この変更です。

構築費用と並べて見るべきなのが、受注事務の人件費です。FAX・電話・メールの注文を人が手入力している会社では、事務1名あたり月25〜35万円(社会保険料等を含む一般的な目安)、2名なら年600〜840万円が固定費としてかかり続けます。欠員が出れば、その週の受注処理が止まるおそれもあります。BtoBサイトの投資判断では、「構築にいくらかかるか」と「この事務コストをいくら減らせるか」を並べて比べます。方式を選ぶ前に、自社の受注処理に今何人分の手間がかかっているかを数えてください。

ShopifyでBtoBサイトを構築する前に押さえるべきこと

BtoBとBtoCでは設計の前提が違う

BtoBでは企業が顧客になるため、BtoCとは購買行動も業務フローも異なります。商品を並べることに加えて、販売条件、社内業務、顧客ごとのルールまで含めて設計します。

  • 取引単価が大きい
  • 継続購入や再注文が多い
  • 請求書払い、掛け払い、後払いが必要になる
  • 顧客ごとに価格や購入条件が変わる
  • 購買担当者、承認者、経理担当者など複数人が関与する
  • 受注後に在庫、請求、出荷、基幹システムとの連携が必要になる

ShopifyでBtoB(卸売)サイトを構築する3つの方法

1. パスワード保護で限定公開する

最もシンプルな方法は、Shopifyストアにパスワード保護をかけ、特定の取引先のみが閲覧できる状態にする方法です。初期検証やMVP(まず最小限の機能で試す版)としては有効ですが、顧客ごとの価格設定や複雑な支払い条件には向きません。

  • 取引先が少ない
  • 顧客ごとの価格差が少ない
  • まずは小さく卸売サイトを始めたい
  • BtoB専用サイトとして限定公開したい

パスワード保護以外にどのようなログイン制限の実装パターンがあるかは、Shopifyクローズドサイトの作り方|BtoB会員制4つの方法でログイン制限・代理店ログイン・パスワード保護それぞれの費用感と向いているケースを比較しています。

2. BtoB向けアプリを組み合わせる

次に、Shopifyアプリを使ってBtoB機能を補完する方法があります。標準機能で足りない部分を柔軟に補える点が強みですが、アプリを増やしすぎると管理画面が複雑になり、保守コストが上がります。

  • 卸売価格設定: Wholesale Hub(旧Wholesale Club)など
  • 請求書払い・掛け払い: Paid、マネーフォワード ケッサイなどの外部決済・請求管理サービス連携
  • 注文制限・最低ロット制御
  • 法人会員向けフォーム
  • 顧客タグ別の価格・表示制御
  • 請求書や納品書の自動発行
  • 配送・返品フローの効率化

上記のアプリはいずれも特定の課題(価格設定・決済・帳票・アクセス制限など)に対応するもので、どれを組み合わせるかは目的によって変わります。カテゴリごとのアプリの選び方と費用感は、Shopify BtoBアプリの選び方|目的別5カテゴリと費用を参照してください。

3. B2B on Shopify(Shopify標準のB2B機能)を活用する

本格的なBtoBサイトを構築する場合は、ShopifyのBtoB機能を活用する選択肢があります。B2B on Shopify では、会社プロフィールや顧客別カタログ、価格表、数量ルールなど、法人取引に必要な設定をShopifyの管理画面でまとめて扱えます。

  • 会社プロフィール設定
  • 顧客企業・担当者管理
  • ロケーション別の条件設定
  • 顧客別カタログ(会社への直接割り当てはShopify Plus)
  • 価格表
  • 数量ルール
  • 支払期日などの決済条件
  • 再注文導線
  • 発注書番号の管理
  • Shopify Flow(条件に応じて作業を自動実行する機能)による業務自動化

通常プラン(Basic・Grow・Advanced)でも会社プロフィール、支払い条件、数量別価格は使えますが、有効なB2Bカタログ(取引先向けの価格表)は3つまでです。上限のないカタログによる顧客別価格、会社・ロケーションへのカタログの直接割り当て、一部支払い・前払い(デポジット)はShopify Plus限定です(Shopify Changelog・2026年4月2日)。取引先ごとの価格パターンが4つ以上ある場合は、Shopify Plusにするか、アプリで補うかを比べて決めます。

3つの方式の費用相場

方式ごとの費用の目安は次のとおりです。実際の金額は、取引先数・商品点数・連携範囲によって変動します。

  • パスワード保護での限定公開:Shopify自体の月額料金(Basicプランで月4,850円、年払いなら月3,650円)に加え、設定作業が中心のため追加費用はほぼ発生しません。外部に依頼する場合も、テーマカスタマイズの範囲であれば比較的小規模に収まります
  • BtoBアプリを組み合わせた構成:Shopify月額料金に加え、卸売価格アプリ・決済代行アプリ等の月額利用料(合計で月数千円〜数万円)が加わります。要件定義・アプリ設定・基本連携までを外部に依頼する場合は、その範囲に応じた規模になります
  • B2B on Shopify/カスタム開発:Shopify Plusを使うケースと、通常プランのB2B機能で足りるケースとで月額は変わります。フルカスタムや既存システム連携を含む構築は150時間以上の工数がかかることも珍しくなく、規模は要件によって大きく変わります

いずれも「構築費」だけで判断すると、公開後の運用・改修費用を見落とします。見積もりを比較する際は初期構築費と月次の保守・運用費を分けて確認し、自社の受注事務コスト削減額(冒頭で触れた月25〜35万円/人)と比較して投資回収の見通しを立てることをおすすめします。

3つの方式を比較表で見る

上記の費用感を判断に使いやすい形で並べると、次の比較表のとおりです。取引先ごとの価格パターン数と、掛け払いの要否・基幹連携の有無が、どの方式が現実的かを分ける最初の目安になります。

方式向いている取引先パターン価格例外への対応掛け払い対応基幹連携費用感(月額の一般的な目安)
パスワード保護(限定公開)取引先が少なく価格差もほぼない顧客タグ止まりで複雑な例外には弱い標準では非対応・外部決済アプリが必要基本的に非対応(別途連携が必要)Shopify月額料金のみ(Basicプランで月4,850円、年払いなら月3,650円)
BtoBアプリの組み合わせ価格例外が4パターン以上で、Plusは見送りたい顧客タグ+アプリでおおむね対応可Paid・マネーフォワード ケッサイ等の外部アプリで対応CSV連携が中心Shopify月額料金+アプリ利用料(月数千円〜数万円)
B2B on Shopify/カスタム開発価格パターン3つ以内(通常プラン)、取引先ごとの個別価格や基幹連携が要る(Plus・カスタム)標準機能・カスタムで柔軟に対応標準機能+外部サービスで対応API連携が可能通常プラン(Basic月4,850円〜Advanced月58,500円)かShopify Plus(3年契約で月368,000円から)かで変動
3方式の比較(金額は市場の一般的な目安)

表のShopifyの料金は2026年10月時点の公式料金ページの金額(年払い・3年契約と書いたもの以外は月払い)で、対応範囲は目安です。どの方式が自社に合うかは、次の3問で自社の要件を具体的に当てはめて確認してください。

どの方式が自社に合うか:3問で確かめる

3つの方式のどれを選ぶかは、次の3問でおおよそ絞れます。相見積もりを取る前に自社で答えを出せば、各社の提案が自社の条件に合っているかを判断できます。

  • Q1. 取引先ごとの価格・掛率の例外は何パターンあるか? → 3パターン以内なら通常プランのB2B機能(有効なカタログ3つまで)で足りる。4パターン以上ならアプリで補うか、Shopify Plusの会社別カタログやカスタム開発を検討する(→ 複数価格・ロット販売の実装)
  • Q2. 掛け払い(請求書払い)は必須か? → 必須なら決済代行アプリか基幹連携を最初から設計に含める。後付けはコストが跳ねる(→ 掛け払いの導入方法)
  • Q3. 基幹システム(販売大臣・弥生販売・オービック等)とデータ連携するか? → するなら、その実装経験の有無が発注先選びの分かれ目(→ 開発会社の選び方)

3問すべてがシンプル側(例外が少ない・掛け払い不要・基幹連携なし)なら、パスワード保護+アプリの最小構成で十分に運用できます。1つでも複雑側に振れるなら、要件定義に時間をかけ、B2B on Shopifyやカスタムを含めた設計が必要です。この見立てを飛ばして構築に入ると、冒頭で触れたように公開後の例外処理が積み重なります。

構築手順1: 要件定義で取引条件を整理する

Shopify BtoBサイト構築の最初の工程は要件定義です。機能を選ぶ前に、対象顧客、商材、価格、支払い条件、配送条件、連携システムを決めます。

  • 対象顧客: 法人、小売店、代理店、既存取引先など
  • 商材: 通常商品、限定商品、法人専用品など
  • 価格体系: 標準価格、顧客別価格、数量割引
  • 最低ロット: 最小購入数、購入単位、ケース単位
  • 支払い条件: クレジットカード、銀行振込、請求書払い、掛け払い
  • 配送条件: 送料、配送エリア、リードタイム
  • 与信・審査: 新規取引申請、承認フロー
  • 権限: 発注者、承認者、管理者
  • 連携: 在庫管理、会計、基幹システム、CRM(顧客管理システム)

PM視点: 最初から全要望をシステム化しない

営業部門の要望をすべて初期段階でシステム化しようとすると、例外処理が膨らんで保守コストが高騰します。「このお客様だけ特別に」を全部受け入れると、半年後に誰も全体像を把握できないシステムになっています。最小構成で動かし始め、運用の中で優先度が高い要望から順に追加します。初期に入れるのは次の5つが目安です。

  • 標準価格
  • 顧客別価格
  • 最低ロット
  • 請求書払いまたは掛け払いの基本フロー
  • 問い合わせ・見積導線

その後、運用データを見ながら、数量割引、承認フロー、顧客ランク、複雑な配送条件を段階的に追加すると、システムが肥大化しにくくなります。

BtoB顧客管理の階層構造(会社・担当者・配送先・請求先)の図解

構築手順2: ストアと顧客管理を設計する

BtoBサイトでは、個人の会員登録より、会社単位の管理を基本にします。B2B on Shopify を使う場合は、会社プロフィールとロケーション(拠点)の単位で条件を組み立てます。アプリ構成の場合は、顧客タグやメタフィールド(商品・顧客に追加できる自由なデータ項目)を使って条件を管理する設計が考えられます。

  • 会社情報
  • 担当者情報
  • 拠点・ロケーション
  • 請求先
  • 配送先
  • 担当者ごとの権限
  • 顧客別の閲覧可能商品
  • 顧客別の価格表

構築手順3: 価格・割引・購入条件を設計する

BtoB卸売サイトで最初に詰まるのは価格設計です。基本は、標準価格、顧客別価格、数量割引の3層に分けて考えます。

  • A社には掛け率70%(標準価格の70%で販売)
  • B社には特定カテゴリのみ卸価格
  • 10個以上で5%割引
  • 30個以上で10%割引
  • 最低注文数は1ケース単位
  • 一部商品は見積依頼のみ

PM視点: 価格例外を無制限に増やさない

価格例外を細かく作りすぎると、後から誰も管理できない状態になります。「この顧客は特別」「この商品は例外」「今月は割引」を無制限に受け入れると、Shopify側に加えて、請求、在庫、CS対応まで複雑になります。

  • 例外価格を誰が承認するか
  • 価格表を誰が更新するか
  • 価格変更の頻度
  • 顧客別価格の上限パターン
  • アプリで管理する範囲と手動対応する範囲
BtoB受注フロー(注文・与信確認・請求書・在庫・出荷・入金)の6ステップ図解

構築手順4: 決済・請求・受注フローを設計する

BtoBでは、決済まわりの設計も外せない論点です。請求書払い・掛け払いを扱う場合は、Paid やマネーフォワード ケッサイなどの外部サービス連携も検討候補になります。

  • クレジットカード
  • 銀行振込
  • 請求書払い
  • 掛け払い
  • 後払い
  • 商品受領後の支払い
  • 一部前払い

また、注文受付、在庫引当、与信確認、請求書発行、入金確認、出荷指示、配送通知、会計処理までの流れも明確にします。BtoBのサイトでは、注文を受けることに加えて、正しく請求し、正しく出荷できることまでを設計の対象にします。

与信確認のステップでは、取引先ごとにどこまで掛け売りを認めるか(与信枠)を事前に決めます。与信枠の設定方法や回収リスクの兆候の捉え方は、BtoB卸の与信管理|取引先ごとの与信枠と回収リスクの仕組み化に手順があります。

掛け払い運用で見落としやすいインボイス制度・電子帳簿保存法対応

BtoB構築の相談では、掛け払い(請求書払い)の可否ばかりが論点になりがちですが、実務ではその先に2つの法令要件が控えています。ひとつは適格請求書(インボイス)としての記載要件、もうひとつは発行・受領した請求書データをどう保存するかという電子帳簿保存法の要件です。この2つは別の制度であり、どちらか一方を満たしても対応は完結しません。

掛け払い受注から適格請求書の発行、電子帳簿保存法に沿った電子データ保存までの流れと、標準機能で足りる範囲・アプリや基幹連携が必要になる境目を示した構造図
請求書の発行と、発行後のデータ保存は別の要件。どちらか一方では対応が完結しない

適格請求書は、登録番号・適用税率・税率ごとの消費税額といった記載要件を満たして発行する必要があります。Shopifyの標準機能や決済連携アプリで請求書を発行する場合も、この記載要件を満たしているかを確認します。

もう一つが、発行・受領した請求書データを電子のまま保存する義務です。電子帳簿保存法では、電子的に授受した取引データを紙に印刷して保存するのではなく、検索要件や訂正・削除の防止措置を満たした形で電子データのまま保存することが原則になります。掛け払いの受注量が増えるほど、この保存の仕組みを標準機能で満たせるか、外部サービスや基幹連携が必要になるかの見極めが重要になります。

標準機能で足りる範囲と、アプリ連携・基幹連携カスタムでの対応が必要になる境目は、Shopify BtoBのインボイス対応|適格請求書の発行と保存で具体例とともに説明しています。掛け払いを構築要件に含める場合はこの記事も確認すると、発行のみ対応して保存要件をやり直すという手戻りを防げます。

構築手順5: 法人顧客向けのUXを整える

BtoBサイトでは、法人顧客が迷わず発注できる導線が必要です。BtoCのような見た目の華やかさより、探しやすい・再注文しやすい・間違えにくいことを優先します。

  • 商品検索
  • カテゴリ導線
  • 定番商品の再注文
  • 見積依頼
  • 問い合わせ
  • 発注書番号入力
  • 購入履歴
  • 請求・配送情報の確認
  • 大口注文時の数量入力

構築手順6: アプリと外部連携を選定する

Shopifyの標準機能で不足する場合は、アプリや外部サービスを組み合わせます。ただし、アプリは多ければよいわけではありません。導入するたびに、月額費用、設定管理、表示速度、障害時の切り分けが増えます。

  • 卸売価格
  • 会員制販売
  • 注文制限
  • 請求書発行
  • 掛け払い
  • 配送管理
  • 返品管理
  • 法人申請フォーム
  • 多言語・多通貨
  • ポイント・ロイヤリティ
  • GA4(Googleの無料アクセス解析ツール)計測

構築手順7: 公開前にテストする

公開前には、実務に近いテストシナリオを作成します。法人顧客テストアカウントを複数用意し、実際の取引に近い注文パターンで確認すると、公開後のトラブルを減らせます。

  • 顧客別価格が正しく表示されるか
  • ゲストには卸価格が見えないか
  • 最低ロットが機能するか
  • 数量割引が正しく反映されるか
  • 請求書払いのフローが成立するか
  • 注文通知メールが正しいか
  • 配送条件が正しいか
  • 税計算が正しいか
  • 権限別に画面表示が変わるか
  • 再注文導線が機能するか
  • 管理画面で運用担当者が処理できるか

取引先にどう移行してもらうか|案内と並行運用の設計

BtoBサイトが使われるかどうかは、機能よりも移行の進め方で決まります。得意先から見ると、Web発注は「自分たちの仕事のやり方を変えろ」と言われることと同じであり、案内なしに切り替えを求めれば反発が返ってきます。

  • 移行の順番を決める:全取引先を一斉に移すのではなく、①発注件数が多くWebに抵抗のない先、②定番品の再注文が中心の先、③特殊な条件が多い先、の順に段階的に案内します。①の取引先が移った段階で受注件数の相当部分がWebに移ることが多く、効果が早く出ます。
  • 並行運用の期間を明示する:「FAXも当面そのまま受け付けます」と最初に伝えます。期限を切って強制すると、取引そのものを失う危険があります。
  • 案内資料は1枚に絞る:ログイン方法・注文手順・困ったときの連絡先の3点だけを載せた紙を、請求書や納品書に同梱するのが最も届きます。マニュアルを作り込むより効果があります。
  • 最初の1回を営業が伴走する:電話をつないだまま、営業が操作を案内して1件目の注文を入れてもらうと、以降は自走します。ここに営業の時間を使うほうが、機能を増やすより投資対効果が高くなります。
  • 移行率をKPIにしない:現場が数字を追うために取引先へ圧力をかける構図になります。見るべきは受注1件あたりの処理時間と、入力ミスの件数です。

Webに移れない先が残るのは前提です。残ったFAX・電話の注文をどう吸収するかまで含めて設計して初めて、事務の総量が減ります。

公開後に見るべきKPI

BtoBサイトは、公開後の数字を見て改善点を決めます。公開直後に追うのは再注文率と受注処理時間です。再注文率が伸びなければ再注文導線と取引先への案内を、処理時間が下がらなければ基幹連携と手作業が残っている工程を見直します。

  • 問い合わせ率
  • 見積依頼数
  • 見積から受注への転換率
  • 再注文率
  • 客単価
  • 受注処理時間
  • 注文ミス件数
  • 顧客別売上
  • 商品別売上
  • 離脱ページ

発注前に確認したいBtoB構築の3つの注意点

発注の前に、次の3点を確かめてください。ここを外すと、サイトは整っても受注事務が減らないという結果になります。

  • 「FAX・電話をゼロにできる」は多くの卸で実現しない。得意先は自分の発注方法を簡単には変えず、移行を強制すれば取引そのものが離れる。現実的なのは、Webに移れる先だけShopifyへ動かし、残るFAX・電話はAI-OCRで読み取って、両方のデータを基幹に一本化する設計。移行率をKPIにすると、現場が取引先へ移行を迫る構図になる(→ 受発注システムの選び方)
  • 最も見落としやすいのは基幹連携。ECで注文が増えても、そのデータを販売大臣・弥生販売などの基幹へ手入力し直しているなら、事務は1件も減らない。この二重入力を消すデータ連携(CSV自動出力〜API)を初期スコープに含めないと、「ECを入れたのに楽にならない」で終わる
  • 補助金ありきでシステムを選ぶと失敗しやすい。ECサイトの制作費が対象になるかは制度・年度・申請枠で異なり、インボイス対応の受発注ソフトや業務効率化ツールが対象になる制度もある。ただし補助金の対象に合わせて自社の業務を変えるのは本末転倒で、道具は業務から選ぶ(申請年度の公募要領で対象経費を確認する)

公開後に継続して発生する運用作業

BtoBサイトは、取引条件が変わるたびに手を入れる仕組みです。誰がどの頻度で対応するかを公開前に決めておかないと、条件変更の依頼が営業から担当者へ個別に飛び、結局は電話とメールに戻ります。

  • 顧客別条件の変更(月次〜随時):価格改定、掛率変更、与信枠の見直し、担当者の交代。BtoBで最も頻度が高い作業です。
  • 商品の追加・改廃(週次〜月次):品番・入数・規格の登録。基幹と二重に登録する運用になっていないかを定期的に確認します。
  • 取引先からの問い合わせ対応(随時):「ログインできない」「前回と同じものを注文したい」が二大質問です。FAQとログイン再発行の導線を用意しておくと問い合わせが減ります。
  • 注文データの連携確認(日次):ECの注文件数と基幹の取込件数の突合。ここを自動化すれば、連携事故に翌日中に気づけます。
  • アプリの更新対応(随時):使用アプリの仕様変更・値上げ・提供終了。導入時に代替手段の有無も確認します。

社内で保守しきれない場合は、構築段階から運用を見据えて外部パートナーを入れることで、公開後の手戻りを抑えやすくなります。

まとめ

ShopifyでのBtoB(卸売)サイト構築は、方式の選定、取引条件の設計、公開後の運用体制の3つで成否が分かれます。

自社の取引複雑度に応じて、限定公開、アプリ補完、B2B on Shopify の活用を組み合わせることで、実務に耐える卸売サイトを構築できます。

最初からすべてを作り込まず、標準価格・顧客別価格・最低ロット・請求フローという、事業に必要な最小構成から始めてください。そのうえで運用データを見ながら段階的に拡張するほうが、保守しやすく成果にもつながります。受注データが一元化されれば、取引先別の実質収益や売れ筋・死に筋を経営数字として見る段階(多店舗・多チャネルのデータ統合)にも進めます。

取引先ごとの価格・支払い条件がまだ書き出せていない段階なら、awai Buildはその洗い出しと3方式の選定から入ります。Shopifyでの構築、基幹システムとの受注データ連携、公開後の保守運用とデータ分析までを同じ窓口で担当し、方式を決めかねている場合は、現在の受注フローから最初に作る範囲を決める作業を手伝います。

自社ECの「作り方」も「伸ばし方」も、30分の無料相談で一緒に整理します作り方・予算のかけ方・マーケの知見・広告運用のうち、どれか一つが欠けていても、良い商品は売上につながりません。現状のEC・SNS・顧客データをうかがい、どこから伴走を始めるべきかをその場でご案内します。

よくある質問

Q. Shopify BtoBサイトの構築期間はどのくらい見ておけばいいですか?
A. パスワード保護の限定公開で1〜2週間、アプリ構成の標準的なBtoBサイトで6〜8週間、基幹システム連携が入るケースで3〜6ヶ月が目安です。構築を長引かせる最大の要因は要件定義の不確定事項(価格体系・承認フロー・配送条件)です。発注前にこれらが確定していると、工期が延びにくくなります。
Q. Shopify BtoBサイトは、基幹システム(ERP・販売管理)と連携できますか?
A. できます。ShopifyはAdmin APIとWebhookを公開しており、注文・顧客・在庫データを基幹システムと双方向で連携できます。freee・弥生・マネーフォワードなどの会計ソフトはCSV連携で対応でき、SAPや独自ERPとはAPI連携が必要になります。「どのデータをどのシステムに集約するか」を最初に決めてから進めないと大きな手戻りが発生します。
Q. BtoBサイト構築で最初に決めるべき項目は何ですか?
A. 対象顧客、価格体系、最低ロット、支払い条件、配送条件、承認フローの6項目を発注前に確定させてください。ここが曖昧なまま進めると、公開後に大きな手戻りが発生します。
Q. 社内にShopify経験者がいませんが、公開後に運用できますか?
A. できます。Shopifyの管理画面は直感的に設計されているため、EC運用経験がない担当者でも2〜3時間程度のトレーニングで基本操作は習得できます。ただし、顧客別価格や与信の設定変更まで自社で行うなら、操作手順書を納品時に受け取ってください。月次の改修依頼や質問対応を保守契約に含めるかどうかは、社内で対応できる範囲を決めてから判断すると無駄がありません。
Q. アプリ導入はどこまで必要ですか?
A. 標準機能で不足する業務領域に絞って補完するのが基本です。最初から入れすぎるより、課題に応じて段階導入する方が運用負荷を抑えられます。ただし「後から追加すると設計を変えなければならない」アプリ(複数価格設定・承認フロー等)は初期設計に含めておく方が結果的に安くなります。
Q. Shopify BtoBサイトの構築費用の相場はどれくらいですか?
A. 方式によって幅があります。パスワード保護での限定公開、BtoBアプリを組み合わせた標準的な構成、B2B on Shopifyやカスタム連携を含む本格構築と、要件によって規模は大きく変わります。見積もりを取る前に、取引先数・価格体系の複雑さ・基幹との連携範囲の3点を書き出してから依頼すると、比較できる見積もりが出てきます。なお、構築費とは別にShopify自体の月額料金(通常プランかShopify Plusか)と保守・運用費が継続して発生する点にもご留意ください。
Q. ShopifyのBtoB受注で掛け払いを扱う場合、インボイス制度や電子帳簿保存法にはどう対応すればいいですか?
A. 適格請求書としての記載要件(登録番号・税率区分・税額)を満たして発行することと、発行・受領したデータを電子帳簿保存法の要件に沿って電子のまま保存することを、分けて確認してください。標準機能やアプリで発行まで対応できても、検索要件を満たす保存の仕組みは別途の設計が必要になるケースがあります。標準機能で足りる範囲の見分け方は、Shopify BtoBのインボイス対応を扱った記事にあります。

関連記事

新着記事

自社ECの「作り方」も「伸ばし方」も、30分の無料相談で一緒に整理します

作り方・予算のかけ方・マーケの知見・広告運用のうち、どれか一つが欠けていても、良い商品は売上につながりません。初回無料・オンライン・強引な営業なし。

30分の無料相談を予約する
30分の無料相談を予約する

オンライン・初回無料