公開日: 2026.05.13 / 最終更新日: 2026.05.13
既存の取引を1件も壊さない、卸売EC移行の並走設計
卸売のEC移行で怖いのは新システムの不具合より既存取引の断絶です。年商8億の食品卸を想定シナリオに、FAX・電話受注とECを並走させながら得意先を段階移行させる設計手順を解説します。
たとえば、年商8億円の業務用食品卸を想定します。得意先は約120社。受注はFAXが6割、電話が3割、メールが1割。受注担当は2名で、月末は請求書の突き合わせで残業が常態化している——中小卸として、ごくありふれた姿です。
この会社がShopify B2BでのEC化を決めたとします。社長の頭にまず浮かぶ不安は、システムの出来ではありません。「切り替えで既存の注文が落ちたらどうするか」です。飲食店の得意先にとって、頼んだ食材が届かない日が1日あるだけで取引見直しの理由になります。卸のEC移行で守るべき最優先事項は、新システムの完成度ではなく既存取引の無断絶です。
失敗パターンは「切り替え日を決めた一斉移行」
最も危険なのは、「◯月1日からはECでお願いします」と全得意先に一斉切り替えを迫る計画です。この方式は3つの理由で破綻します。
- 得意先の準備速度は120社ばらばらで、切り替え日に間に合わない先が必ず出る
- 移行と同時にFAX窓口を閉じると、間に合わなかった先の注文が行き場を失う
- 初日にトラブルが起きたとき、全取引が同時に影響を受け、戻す先もない
移行は切り替えではなく並走で設計します。旧チャネル(FAX・電話)を生かしたまま新チャネル(EC)を開き、得意先ごとに移る速度を変えるのです。
並走設計の骨格: 得意先を3つの群に分ける
想定の食品卸なら、120社を発注頻度とデジタル対応力で3群に分けます。分類は営業担当の肌感覚で構いません。ここは精密さより着手の速さが大事です。
- 先行群(10〜20社): 発注頻度が高く、関係が深く、メール発注に既に慣れている先。公開後1〜2か月でここだけを案内する
- 順次群(60〜80社): 先行群の運用が安定してから、営業訪問のついでに個別案内する主力群
- 継続群(20〜30社): 高齢の店主や発注が月1回程度の先。無理に移行させず、FAX・電話のままでよいと最初から決める
ポイントは継続群の存在を計画に織り込むことです。「全社移行」を目標にすると、動かない2割のために案内コストが際限なく膨らみます。残るFAXはAI-OCRや受注代行入力で処理コストを下げる、と割り切ったほうが全体の投資対効果は上がります。
並走期の実務: 二重運用の負担をどう抑えるか
並走設計の弱点は、FAXとECの2系統を同時に回す期間の負担です。ここで効くのが受注の合流点を1か所にすることです。FAXで来ようがECで来ようが、最終的に同じ受注データの形で基幹システムに入る。この合流点を先に作っておけば、チャネルが2つあっても後工程(在庫引当・出荷・請求)は1本のままです。
想定の食品卸であれば、EC受注は自動で基幹に流し、FAX受注はAI-OCRで読み取って同じ形式に変換する構成が現実的です。並走期は「二重入力の期間」ではなく「入力が自動化されていく期間」として設計します。
移行の進捗はEC経由比率で測る
並走移行には終わりの定義が要ります。指標はシンプルに受注件数に占めるEC経由比率です。想定シナリオなら、公開3か月で2割、1年で5〜6割に達すれば十分な成功です。比率が止まったら、得意先別の利用状況を見て「案内したが使われていない先」を特定し、営業が個別にフォローする。この地道な運用が、システムの機能よりも移行の成否を左右します。
awai Coreは、Shopify B2Bの構築とFAX・電話受注のAI自動化を一体で設計するため、この記事で描いた「合流点を1か所にした並走」をそのまま実装できます。移行後はチャネル別の受注データが揃うので、awai CompassでEC経由比率や得意先別の動きを経営数字として追うところまでつながります。既存取引を壊さない移行計画を立てたい方は、現状の受注チャネル構成の診断からご相談ください。
本記事とあわせて、得意先がECに移行しない問題や楽天・Amazonからの移行もご覧いただくと全体像がつかめます。
30分の無料相談を予約する貴社の得意先構成と受注チャネル比率を伺い、先行・順次・継続の3群分けと並走期間の受注合流設計をその場で下書きします。よくある質問
- Q. 移行中に取引が止まりませんか?
- A. 既存のFAX・電話受注を止めずにECを並走させ、移れる得意先から段階的に移すことで、取引を止めずに移行できます。
- Q. 既存の受注データは引き継げますか?
- A. 得意先・商品・価格などのマスタは移行できます。移行設計では既存取引の条件を正確に写すことが最重要です。
- Q. 移行にはどのくらいの期間がかかりますか?
- A. 規模と要件によりますが、基盤構築後に数社の先行導入で型を作り、順次広げるのが安全です。一斉切替は避けます。
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