公開日: 2026.05.19 / 最終更新日: 2026.10.21
B2B ECが使われない原因と立て直し方|使われるECとの差
B2B ECを得意先が使わない原因を、導入支援の不足・機能の多さ・ログインやスマホ対応の不備の3つから説明します。使われるECとの差を表で比べ、原因を特定してから立て直す手順も示します。
B2B ECが使われない原因の多くは、システムの不具合や機能不足にはありません。主な原因は3つです。公開後の導入支援がなく得意先が最初の注文をしないこと、機能が多すぎていつもの再注文に時間がかかること、ログイン・スマホ対応・例外時の連絡手段が得意先の発注の実態に合っていないことです。
立て直しは、作り直す前に原因を特定するところから始めます。得意先別のログイン状況、再注文にかかる手数、価格表示の正しさを確かめ、原因が運用・導線・データのどこにあるかで直す対象を決めます。全面リニューアルが必要になるケースは多くありません。
使われないECは、構築費を払ったうえにFAX事務がそのまま残り、ECの保守費やアプリの月額が上乗せされるため、かえって固定費を増やします。以下、3つの誤解に沿って原因を説明し、使われるECとの差を比べたうえで、立て直しの手順を示します。
誤解1:「サイトを作って案内すれば、得意先は使ってくれる」
案内だけでは使われません。得意先から見れば、いまのFAXや電話は不便のない発注手段です。案内文1通で、慣れた手段を置き換える得意先は多くありません。得意先がECに移るのは、移ったほうが自分の業務が楽になると体感したときです。
そのため、比べる相手は常に現状のFAX・電話です。ログインし、商品を探し、数量を入れるという一連の操作が、FAX1枚を書くより速いかが問われます。この比較で負ける画面は、機能が揃っていても使われません。公開後の最初の1か月に、営業担当が主要得意先の事務所へ出向き、初回注文の操作に立ち会います。この立ち上げの運用まで含めて「構築」と考えます。
誤解2:「機能が多いほど、使われるECになる」
機能が増えるほど、使われにくくなります。B2B ECの利用者は、買い物を楽しむためでなく、仕事の発注を終わらせるために画面を開きます。ボタンやメニューが増えると、週1回しか触らない得意先の担当者は、そのたびに操作を覚え直すことになります。
毎週開かれるB2B ECの画面は単純です。ログインすると自社の定番品と前回の注文が見えて、数量を直して確定します。レコメンドも特集バナーも要りません。発注側が決めるのは、開発会社への要望を増やすことより、初期リリースから何を削るかです。
誤解3:「使われないのは、得意先がITに弱いから」
この結論は自社に都合がよいため、疑ってかかります。年配の店主でもスマートフォンでLINEを使い、ネット通販で買い物をしています。個人としてデジタルを使いこなしている相手が自社のECを使わないなら、原因は相手よりも、こちらの画面と運用にあると考えます。多くの場合、次の3つのどれかに当たります。
- ログインの手間:パスワードを忘れた時点で得意先はFAXに戻る。ID管理の設計と再発行の手軽さを最優先で決める
- スマホ対応:飲食店の発注は閉店後の厨房や移動中に行われる。PC向けの画面はその時点で選ばれない
- 例外時の逃げ道:欠品・急ぎ・特注のとき電話に切り替えられる安心感がないと、最初からECを選ばない
使われるB2B ECと使われないB2B ECの差
3つの誤解を裏返すと、使われるECの条件が見えます。次の表は、公開前のチェックにも、放置されているECの点検にも使えます。
| 項目 | 使われるEC | 使われないEC |
|---|---|---|
| ログイン | 得意先ごとにIDを発行し、再発行を電話1本で受け付ける | パスワードを忘れると再発行まで数日かかる |
| ログイン後の画面 | 定番品と前回の注文が最初に表示される | トップに特集バナーや新商品が並ぶ |
| 再注文 | 前回の注文を呼び出し、数量を直して確定できる | 毎回、商品を検索して一から入力する |
| 価格表示 | 得意先別の価格・掛け率が正しく出る | 定価表示や誤った単価が混じる |
| スマホ | 閉店後の厨房や移動中にスマホで発注できる | PCでしか操作しにくい |
| 例外時 | 欠品・急ぎ・特注は電話に切り替えられると明示している | ECで受けられない注文の扱いが決まっていない |
| 公開後の運用 | 利用状況を見る担当者と、声をかける時期が決まっている | 案内文を送ったまま |
正しい判断軸:「毎週開く理由」を要件にする
3つの誤解の共通点は、視点が自社側にあることです。「自社の受注業務が楽になるか」で仕様を決めると、得意先が使う理由のないECができあがります。要件定義は、得意先を主語にして書きます。得意先の発注担当者が毎週この画面を開く理由は何か。「FAXより速く、在庫と納期がその場で分かり、履歴を請求と突き合わせられるから」と答えられるなら、そのECは使われます。
使われているかは、感覚でなく数字で追います。次の3つを毎月見れば、放置の兆候を早い段階で掴めます。
- 得意先別のログイン頻度:案内した先が開いているか。ログインもされていなければ、原因は画面よりも案内と初回導入の運用にある
- EC経由の受注比率:全受注に占めるEC発注の割合。公開前に月ごとの目標を決め、計画を下回る月が続けば立て直しのサイン
- 初回注文から2回目までの日数:1回使って戻ってこないなら、初回の操作のどこかで「FAXより速い」を実感できていない
B2B ECを公開して終わりにしないために、公開後3か月の運用計画を構築の要件に含めます。誰が利用状況を見るか、利用が伸びない得意先へいつ声をかけるか、FAX・電話との並行運用をいつまで続けるか。この3点を決めずに公開すると、使われないまま時間が過ぎます。
放置されているECを立て直す手順
すでにB2B ECを持っているのに使われていない場合、作り直す前に「なぜ使われないか」を特定します。原因を外したまま作り直しても、また放置されます。
- ログイン状況を見る:ログインされているか、初回で離脱していないか
- 再注文の手数を数える:いつもの注文が何クリックで終わるか
- 価格の不安を確認する:得意先別価格が正しく出ているか、間違いへの不信がないか
- 得意先の担当者に聞く:発注のどの操作で詰まっているか
直す対象は、原因の層で決まります。案内した先の多くがログインもしていないと分かれば、直すのは画面より初回導入の運用で、費用はほとんどかかりません。「ログインはするが再注文に5クリック以上かかる」なら導線の作り直し、「得意先別価格が誤表示される」ならデータ整備が先です。原因の層を確かめないまま全面リニューアルに踏み切ると、費用をかけても同じ理由で使われません。
導線を作り直す場合は、B2B ECの再注文設計で挙げた注文履歴・定番品リスト・数量の記憶の3つから手を付けます。いつもの注文が何クリックで終わるかを直す前後で数えると、改善の幅を得意先にも示せます。
システムの選び直しまで視野に入る場合は、Bカート・CO-NECT・Shopify B2Bを比較|受発注の器の選び方の判断基準が使えます。Shopifyで作り直すならShopifyでB2Bサイトを構築する方法に費用と手順があり、開発を内製と外注のどちらで進めるかはAI受託開発の内製・外注の判断基準が参考になります。
使われない原因が運用・導線・価格データのどこにあるかを、ログイン状況と受注データから切り分けるのがawaiの最初の作業です。そのうえで再注文の導線づくり、得意先別価格のデータ整備、主要得意先への導入支援を受け持ち、作り直すかどうかもその結果をもとに判断します。
自社ECの「作り方」も「伸ばし方」も、30分の無料相談で一緒に整理します作り方・予算のかけ方・マーケの知見・広告運用のうち、どれか一つが欠けていても、良い商品は売上につながりません。現状のEC・SNS・顧客データをうかがい、どこから伴走を始めるべきかをその場でご案内します。よくある質問
- Q. ECを作れば得意先は使ってくれますか?
- A. 作るだけでは使われません。得意先が判断するのは見た目より、「電話やFAXより手間が少ないかどうか」です。毎週の定型的な発注が短い操作で終わるか、前回と同じ注文が何クリックで出せるか、欠品時に代替品がすぐ分かるか。ここで電話に負けていると、公開しても利用は伸びません。公開前に主要得意先の発注を自分で操作し、電話との所要時間を比べてください。
- Q. 機能は多いほうがいいですか?
- A. いいえ。B2Bの発注は再注文が中心のため、注文履歴・定番品リスト・数量の記憶の3つに絞るほうが使われます。レコメンドや特集ページのような一般消費者向けECの機能は、発注作業の邪魔になることもあります。機能を増やすほど画面が複雑になり、商品を探す時間が増えると考えて設計してください。
- Q. 使われているかはどう測ればいいですか?
- A. 得意先別のログイン頻度、全注文に占めるEC経由の受注比率、初回注文から2回目の注文までの日数の3つを毎月見ます。伸びない場合、原因は得意先の意欲より設計にあることがほとんどです。利用の少ない得意先の担当者から直接話を聞くと、「ログインが面倒」「前回の注文が見つからない」といった具体的な理由が出てきます。
関連記事
- 2026.07.17Shopify B2B卸売とAmazonビジネスを比較|卸の販路の選び方卸売業が新しい販路で迷うShopify B2BとAmazonビジネスを、手数料・顧客データの持ち方・価格の決め方の3つの軸で比較します。取引先の構成から向く販路と併用の仕方を決める手順も解説します。読む
- 2026.06.04Shopify BtoBで複数価格・ロット販売を実装する方法Shopify BtoBで取引先別の価格・ロット販売・最小注文数を実装する3つの方法を比較します。Shopify公式のB2B機能(カタログと数量ルール)、価格管理アプリ、Liquidカスタマイズの違いと選び方を解説します。読む
- 2026.05.29Shopifyクローズドサイトの作り方|BtoB会員制4つの方法Shopifyで取引先限定のクローズドサイト(BtoB会員制)を作る4つの方法を比較します。パスワード保護・アカウント必須設定・Shopify公式のB2B機能・アクセス制限アプリの違いと費用感、選び方を決める3つの質問を解説します。読む
- 2026.05.13卸売のEC移行は並走で進める|既存取引を壊さない3群の分け方卸売のEC移行を、FAX・電話受注を残したまま進める並走の手順を解説。年商8億の食品卸を例に、得意先を先行・順次・継続の3群に分ける基準、二重運用を抑える合流点の作り方、進み具合の確かめ方を示します。読む