公開日: 2026.07.17 / 最終更新日: 2026.10.21

Shopify B2B卸売とAmazonビジネスを比較|卸の販路の選び方

卸売業が新しい販路で迷うShopify B2BとAmazonビジネスを、手数料・顧客データの持ち方・価格の決め方の3つの軸で比較します。取引先の構成から向く販路と併用の仕方を決める手順も解説します。

自社の店舗と、同じ区画が並ぶモールの一枠を天秤にかけ、卸の販路を見比べている情景イラスト

Shopify B2BとAmazonビジネスのどちらを選ぶかは、取引先の構成で決まります。既存の取引先が売上の中心で、得意先ごとの掛率や掛け払いがあるなら、価格と顧客データを自社で持てるShopify B2Bの自社ECが向きます。新規の法人バイヤーとの接点を早く作りたい段階なら、Amazonの法人購買の動線に出品できるAmazonビジネスが向きます。

両方を使う場合は、Amazonビジネスを新規接点の入口、自社ECを既存取引先との継続取引の場と分けます。比べる軸は、手数料の構造、顧客データを誰が持つか、価格を誰が決めるかの3つです。

Amazonビジネスと自社EC(Shopify B2B)の位置づけ

卸売業がECでの新しい販路を検討する際、最初に候補に挙がるのが、Amazonの法人向け購買サービス「Amazonビジネス」と、Shopify B2Bの機能で自社サイト上に法人取引の仕組みを組む「自社EC」の2つです。どちらも「オンラインで法人顧客に販売する」点は共通していますが、手数料の構造、顧客との関係の作り方、価格の決めやすさという3つの軸で性質が異なります。違いを確かめずに「とりあえず両方試す」と、商品登録と受注処理の手間が二重にかかり、どちらの販路も育ちません。

なお、Amazon・楽天などの個人向けモールから自社ECへ乗り換える場合は、楽天・AmazonからShopifyに移行する方法と費用を参照してください。この記事は、まだ本格的なEC販路を持たない卸売業が「法人向けモール(Amazonビジネス)に出るか、自社EC(Shopify B2B)を構築するか」を決める場面を対象にしています。

Amazonビジネスとは何か

Amazonビジネス(Amazon Business)は、Amazonが提供する法人・個人事業主向けの購買プラットフォームです。通常のAmazon個人向けマーケットプレイスとは別に、法人限定価格・数量割引・請求書払い(後払い)・複数担当者による承認フローといった、企業の購買部門が使いやすい機能が用意されています。卸売業がここに出品すると、Amazonが既に抱える法人バイヤーの購買動線に相乗りできる一方、販売手数料(カテゴリごとに定率)が発生し、価格や販促の主導権はAmazonのプラットフォーム側の仕様に一定程度従う形になります。

Shopify B2Bとは何か

Shopify B2Bは、自社ECサイト上に法人取引の仕組み(会社アカウントの管理・得意先ごとのカスタム価格・掛け払いに相当する支払い条件など)を組み込める機能群です。2026年4月、この基本機能がShopify Plus専用から通常プラン(Basic・Grow・Advanced)へ追加費用なしで開放され、より小規模な卸売業でも自社EC上でB2B取引の土台を組みやすくなりました(無制限カタログや得意先ごとの高度な出し分けなど一部機能は引き続きPlus限定)。この機能開放の中身と、Plusを検討すべきかどうかの判断基準はShopify B2Bが通常プランに開放|中小卸は何が変わったかに詳しくあります。

3つの軸で見る構造の違い

Amazonビジネスと自社EC(Shopify B2B)を比較するとき、判断を左右するのは次の3つの軸です。

  • 手数料の構造:Amazonビジネスは取引ごとに販売手数料が発生し続けます。手数料率は出品カテゴリによって異なり、取引が積み上がるほど手数料の総額も比例して増えていく構造です。自社ECは、Shopifyの月額プラン費用が固定でかかり、Amazonのような販売手数料はありません。カード決済や掛け払いの代行サービスを使う分には決済手数料がかかりますが、銀行振込の掛け払いで受ける取引には手数料が発生しません。取引件数・単価が大きい卸売取引ほど、この違いが利益率の差になります。月間の取引総額が大きく、取引先が固定している(新規開拓の比率が低い)卸ほど、自社ECの固定費の構造が有利です
  • 顧客関係の資産化:Amazonビジネスでも、自社が受注した分の注文データ(どの法人に・いつ・何が売れたか)は、出品者向けの管理画面(セラーセントラル)のレポートで参照できます。ただし、そこで得た顧客情報を注文処理以外の目的(自社の営業・販促など)に使うことはAmazonの規約で制限され、顧客アカウントと顧客との接点はAmazon側に置かれます。自社ECなら、購買履歴・問い合わせ履歴を自社で保有し、リピート施策や個別提案、与信管理に使えます。一方でAmazonビジネスの請求書払いは、法人顧客の与信審査・代金の請求・回収をAmazon側が行うため、出品者が取引先ごとの与信リスクを負わずに済みます。違いは、顧客データと与信・回収の実務を自社で持つか、両方をAmazonに委ねるかにあり、優劣の問題ではありません
  • 価格統制のしやすさ:Amazonビジネスは同一カテゴリ内で他の出品者と価格比較にさらされやすく、価格競争の圧力を受けやすい環境です。値下げ合戦に巻き込まれると利益率が圧迫されます。自社ECであれば、取引先企業ごとのカスタム価格・数量に応じた価格ブレークを自社の裁量で設計でき、価格を公開の比較対象にさらさずに済みます

どちらが向くか:取引先の構成で決める判断と併用の形

3つの軸から見ると、向く販路は次のように分かれます。

  • 新規の法人バイヤーとの接点をまず増やしたい段階:自社の認知度が低く、法人バイヤーがまだ自社の存在を知らない立ち上げ期の卸には、Amazonビジネスが向いています。Amazonが既に抱える購買動線に相乗りできるため、営業活動をゼロから積み上げるより早く取引の入口を作れます。手数料は発生しますが、「まず取引の接点を作る」という初速を優先するフェーズでは合理的な選択です
  • 既存取引先との関係を深め、価格・条件を自社でコントロールしたい段階:すでに一定数の取引先を持ち、掛け払い・数量ロット・得意先ごとの価格交渉といった商習慣が定着している卸には、自社EC(Shopify B2B)が向いています。取引データを自社に蓄積し、リピート発注の効率化や与信管理に活用しながら、長期的な取引関係を自社側の資産として積み上げていけます
  • 役割を分けて併用する:どちらか一方に絞らず、役割を分けて両方を使う方法もあります。Amazonビジネスを「新規接点を増やすための入口チャネル」、自社ECを「関係が深まった既存取引先との本命チャネル」と位置づけ、Amazonビジネス経由で接点ができた取引先を、その後の取引量や関係性の深まりに応じて自社ECへ誘導する、という段階的な設計です
  • 判断に迷う場合:取引先リストを新規と既存に分け、売上に占める新規取引先の比率を出します。自社が「新規開拓を優先したい段階」か「既存取引先との関係を深めたい段階」かが数字で分かり、どちらの販路から投資するかを決められます
Amazonビジネスと自社EC(Shopify B2B)の構造比較図。手数料構造・顧客関係の資産化・価格統制の3軸を左右に並べ、新規接点重視ならAmazonビジネス寄り、既存関係重視なら自社EC寄りという2つの活用シーンを示したもの
3つの軸の構造比較。新規接点重視か既存関係重視かで、向く販路は変わる

販路選びでよくある3つの誤解

① 同じ商品を両方に同じ条件で出してよい:Amazonビジネスで公開した価格を既存の取引先が見て、自社ECの得意先価格との差を指摘することがあります。併用するなら、Amazonビジネスには新規向けの商品や入数を絞って出すなど、販路ごとの出し分けを決めてから始めます。

② 手数料の比較で販路を決めてよい:手数料の多寡に加えて、顧客データを自社に蓄積できるか、価格をどこまで自社で決めたいかという数年単位の視点もあわせて検討します。

③ Amazonビジネスへの出品は個人向けの出品と同じ:法人限定価格・請求書払い・複数担当者の承認フローなど、購買側の企業向けに設計された別の仕組みです。一般消費者向けの出品戦略は流用できません。

始めるときの3つの手順

どちらの販路を選ぶ場合も、着手の手順は同じです。次の3点を決めてから動くと、比較も見積もりもぶれません。

①現在の取引先を「既存の継続取引」と「新規開拓したい層」に分け、それぞれの売上比率を出します。②商品ごとに価格をどこまで公開できるかを決めます(取引先別の掛率がある商品は、公開型の販路には出しにくい)。③注文を受けた後の処理(在庫引当・出荷・請求)を、どちらの販路でも同じ基幹で扱えるかを確認します。3つ目を後回しにすると、販路は増えたのに事務が二重になります。

費用の目安

費用の構造は、両者で性質が異なります。Amazonビジネスのような公開型のモールは初期費用が小さく、売れた分に対する手数料が継続的にかかります。自社ECは構築費と月額のプラットフォーム費が先にかかり、売上が増えても手数料は比例しにくい構造です。損益分岐は取扱高で決まります。Amazonビジネスは「年間販売額×販売手数料率+大口出品の月額登録料×12」、自社ECは「構築費+プランの月額×12+決済手数料」で、想定する年間の販売額を入れて両方を試算してから判断してください。

なお、Shopify自体の月額プラン費用やAmazonビジネスの出品手数料は、各社の公式料金ページで随時更新されるため、ここでは具体的な金額を載せていません。ご検討の際は各社の最新の公式情報をご確認ください。

まとめ

Amazonビジネスと自社EC(Shopify B2B)は、どちらも「オンラインで法人顧客に販売する」という共通点を持ちながら、手数料の構造・顧客関係の資産化・価格統制のしやすさという3つの軸で性質が異なります。新規の法人バイヤーとの接点を増やしたい段階か、既存取引先との関係を深め価格・条件を自社でコントロールしたい段階かによって、適した選択は変わります。役割を分けて併用する方法もあります。Shopify B2Bの2026年4月の機能開放はShopify B2Bが通常プランに開放|中小卸は何が変わったか、受発注システムの選び方はBカート・CO-NECT・Shopify B2Bを比較が参考になります。

Shopify B2Bで自社ECを作る範囲の線引き、Amazonビジネスとの商品・入数の出し分け、受注後の基幹システム連携、既存取引先に自社ECで発注してもらう施策の運用が、awai Buildの担当範囲です。手順①の取引先の売上比率が出ていれば、どちらの販路から投資するかの判断から関われます。

自社ECの「作り方」も「伸ばし方」も、30分の無料相談で一緒に整理します作り方・予算のかけ方・マーケの知見・広告運用のうち、どれか一つが欠けていても、良い商品は売上につながりません。現状のEC・SNS・顧客データをうかがい、どこから伴走を始めるべきかをその場でご案内します。

よくある質問

Q. Amazonビジネスと自社EC、どちらから始めるべきですか?
A. 新規の法人バイヤーとの接点を増やしたい段階であればAmazonビジネス、既存取引先との関係を深め価格・条件を自社でコントロールしたい段階であれば自社EC(Shopify B2B)が向いています。役割を分けて両方を併用する方法もあります。
Q. 自社ECとAmazonビジネスは併用できますか?
A. 併用は可能です。Amazonビジネスを新規接点の入口、自社ECを既存取引先との継続取引の場と位置づけ、Amazonビジネスで接点ができた取引先を、取引量に応じて自社ECへ誘導します。
Q. 手数料の面ではどちらが有利ですか?
A. Amazonビジネスは取引ごとに販売手数料が発生し続ける構造で、取引が積み上がるほど手数料総額も比例して増えます。自社ECはShopifyの月額プラン費用が固定でかかり、販売手数料はありません(カード決済などの決済手数料は別途かかります)。取引件数・単価が大きい卸売取引ほど、自社ECの固定費の構造が有利になります。
Q. Shopify B2Bの構築を依頼する場合の費用はどのくらいですか?
A. 構築費は要件によって大きく変わるため、要件を決めてから見積もりを取ります。金額を左右するのは、①得意先ごとの価格・掛率の設定数、②掛け払いなど支払い条件の種類、③在庫・受注を基幹システムと連携するかの3点です。この3点を決めてから複数の見積もりを比べると、金額の差の理由が分かります。Shopifyの月額プラン費用は公式の料金ページで確認し、構築費と合わせて、Amazonビジネスの販売手数料と想定年商で比べてください。

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