公開日: 2026.07.14 / 最終更新日: 2026.10.21
AIエージェントとは|できることと業務活用の始め方・費用の目安
AIエージェントとは、指示を理解して自分で判断し、社内システムを操作しながらタスクの完了まで進める生成AIです。できることや業務活用の具体例、導入の進め方と費用の目安を整理しました。
AIエージェントとは何か
AIエージェントとは、与えられた目的に対して自分で判断し、必要な情報を集め、社内システムやツールを操作しながら、タスクの完了までを自律的に進めるAIのことです。受発注処理や問い合わせ対応のように、手順がある程度決まっていて例外対応のある業務に向いています。導入は対象業務を1つに絞ったPoC(小規模な検証)から始め、費用は既存SaaSの付属機能なら追加費用なし、個別開発では連携するシステムの数と任せる判断の幅で桁が変わります。
質問に文章で答えるChatGPTのような生成AI(LLM=大規模言語モデル。文章を人のように理解して処理できる生成AIの中核技術)と違い、AIエージェントは答えを返したあとも作業を続けます。たとえば「今週届いた注文メールを在庫システムと突き合わせて、不足分の発注案を作っておいて」という指示に対して、メールを読み取り、在庫データを確認し、不足分を計算し、発注案をまとめるところまで、複数の工程を自分で組み立てながら実行します。人が一つひとつの工程を指示しなくても、目的から逆算して必要な手順を自分で判断する点が、通常の生成AI活用との最も大きな違いです。
AIエージェントとチャットボットは何が違うのか
AIエージェントとよく混同されるのが、社内で使われているチャットボットです。両者の違いは、答えを返して終わるか、実行まで進めるかの一点です。
チャットボットは、ユーザーからの質問に対して、あらかじめ用意された知識やマニュアルをもとに文章で回答することが役割です。回答が的確であれば仕事は完了し、その先のシステム操作までは行いません。一方でAIエージェントは、回答したうえで社内システムを操作したり、複数のツールを連携させたりしながら、目的の達成まで進めます。
たとえば「有給休暇の残日数を教えて」に答えるのはチャットボットの仕事ですが、「有給休暇を来週の水曜に申請しておいて」という依頼を受けて実際に申請システムを操作し、承認フローに乗せるところまで行うのはAIエージェントの仕事です。この「実行できるかどうか」の違いが、業務効率化に使える範囲を大きく左右します。
開発会社を比べるときにこの違いを区別しないと、チャットボットの提案とAIエージェントの提案を同じ基準で比べてしまい、費用や難易度の見立てを誤ります。委託先への質問の例と失敗例はAIエージェント開発会社の選び方|チャットボットとの違いと質問例に載せています。
AIエージェントにできること:3つの機能
AIエージェントが実務で役に立つのは、主に次の3つの機能を組み合わせられるためです。
- 判断する:与えられた目的に対して、次に何をすべきかを自分で考える。決まった手順をなぞる自動化と違い、状況に応じて手順を組み立てる。
- ツールを使う:社内システム・外部API・スプレッドシートなど、業務で使うツールを必要に応じて自分で呼び出して操作する。データの参照に加え、書き込みや更新も行う。
- 継続して実行する:一度の応答で終わらず、目的が達成されるまで複数の工程を連続して実行する。途中で情報が足りなければ追加で調べ、エラーが出れば別の方法を試す。
3つがそろうと、聞かれたことに答えるAI活用から、任せた仕事を最後まで進めてもらうAI活用に移れます。判断を無制限に任せると誤った実行のリスクも高まるため、「どこまで自律的に判断させ、どこから人の承認を挟むか」という設計(ガードレール)を最初に決めます。
業務活用の具体例
AIエージェントは特定の業種に限らず、手順が比較的決まっていて、かつ判断や例外対応がある業務であれば、幅広く対象になります。検討されることの多い活用例は次のとおりです。
- 受発注処理:注文メールやFAXの内容を読み取り、在庫システムと突き合わせて不足分を判断し、発注案を作成する。金額や数量が一定基準を超える場合は人の承認を挟む。
- 問い合わせ対応:顧客からの問い合わせ内容を読み取り、過去の対応履歴やマニュアルを参照しながら回答を作成し、必要に応じて社内の対応システムへ記録まで行う。
- 社内ヘルプデスク:従業員からの申請・問い合わせに対して、規程を確認しながら回答し、申請フォームの入力や承認依頼の送付までを代行する。
- データ入力・突き合わせ:請求書や納品書といった帳票を読み取り、会計システムや管理台帳への転記、複数書類間の金額突き合わせまでを行う。
- レポーティング:複数のシステムに散らばったデータを集計し、定型フォーマットのレポートを作成して関係者へ共有する。
いずれの例も、「情報を読み取る」「判断する」「システムを操作する」という一連の流れが、これまで人の手を介していた部分です。手順を文章にでき、例外パターンをある程度分類できる業務ほど、AIエージェント化に向いています。
導入の進め方(4つのフェーズ)
AIエージェントの導入は、全業務を対象にした大規模開発から始めず、段階を踏んで進めます。
①現状の把握では、対象にしたい業務の手順・判断基準・例外対応のパターンを洗い出し、どこまでをAIエージェントに任せられそうかを見立てます。手順が比較的決まっていて、例外対応にルールがある業務ほど向いているため、この段階で対象業務の優先順位をつけます。
②PoC(概念実証。小規模に試して効果を確認する工程)では、対象業務の一部を切り出して、AIエージェントに任せてみます。判断の精度、実行にかかる時間、人の承認が必要になる頻度などを確認し、本格導入した場合の効果とリスクを見積もります。
③実装では、PoCで見えた精度や例外パターンの傾向を踏まえて対象範囲を広げ、本番の業務システムと連携させます。誤った実行を防ぐためのガードレール(一定の条件を超えたら人の承認を挟む、判断の根拠を記録に残す等)もこの段階で設計に組み込みます。実装では、LangChainのような生成AIアプリケーション開発フレームワークを使うこともあります。フレームワークの中身はLangChainとは|できることと導入判断の考え方・費用の目安に書いています。
④運用では、業務の変化や新しい例外パターンの発生に応じて、判断ルールや連携先のシステムを継続的に見直します。AIエージェントは、業務の実態に合わせて、作ったあとも手を入れ続ける仕組みです。
陥りやすい失敗パターン
導入の検討でよく起きる失敗は次の3つです。
①最初から「全自動」を目指す:人の承認を一切挟まずに自律実行させると、想定外の判断ミスが起きたときの影響が大きくなります。重要な判断の手前で人の承認を挟む設計にし、実績を見ながら任せる範囲を広げます。
②業務の手順を書き出さないまま着手する:判断基準や例外対応が担当者の頭の中にしかない状態で開発を始めると、AIエージェントに何を判断させたいのかが定まらず、開発が手戻りします。現状把握の段階で手順を文章にします。
③チャットボットの延長で考える:「賢い受け答えができればよい」という発想のまま進めると、システム連携やツール操作の設計が後回しになり、業務を任せられる範囲が想定より狭くなります。
費用の目安
費用は対象業務の複雑さや連携するシステムの数によって変わりますが、市場の一般的な目安は次のとおりです。特定サービスの確定価格ではありません。
| 進め方 | 初期費用の目安 | 継続費用の目安 | 向いている状況 |
|---|---|---|---|
| 既存SaaSに付属するエージェント機能を使う | 0円(既存契約の範囲) | 利用プランによる | 対象業務がそのSaaSの中で完結している |
| ノーコード/ローコードの開発ツールで組む | 0〜数十万円(設定・検証の工数) | 月額数千円〜数万円+AIの従量課金 | 小規模な業務で、まず動かして確かめたい |
| 個別開発(基幹・外部システムとの連携を含む) | 小規模で500万〜1,000万円、規模が上がると数千万円 | 月額10万〜30万円、または年間で開発費の10〜20% | 複数システムをまたぎ、例外処理の作り込みが必要 |
金額の桁を決めるのは、エージェントに任せる判断の幅と、連携先システムの数です。「調べて答える」範囲なら小さく作れますが、「調べて、判断して、他システムを操作する」まで任せると、誤作動時の取り消し設計まで必要になり、その分の開発費がかかります。
まとめ:「答えるAI」から「実行するAI」へ
AIエージェントは、質問に答える生成AI活用から一歩進み、判断からシステム操作、実行の完了までを任せられる仕組みです。手順が比較的決まっていて、例外対応にルールがある業務であれば、業種を問わず活用の余地があります。
全業務を一度に全自動化しようとすると失敗しやすいため、対象業務を絞り込み、人の承認を挟む設計から始めます。実装の前に、その業務がエージェント化に向くかを次の3点で確かめます。手順を文章で書き出せるか、例外が全体の3割未満か、誤った処理を取り消せるかです。3点を満たさない業務は、自動化の前に業務の手順をそろえます。
導入前によく寄せられる質問にはよくあるご質問でも答えています。
任せる業務の候補を洗い出して上の3点で向き不向きを見立て、PoCの対象範囲を決めるところまでを、awaiは支援しています。
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- Q. AIエージェントとRPA(決められた手順を繰り返す自動化ツール)は何が違いますか?
- A. RPAは決められた手順を毎回同じ通りに実行する自動化ツールで、手順を変える判断はできません。AIエージェントは目的から必要な手順を自分で組み立てて実行するため、例外対応や状況に応じた判断が必要な業務にも対応できます。手順が完全に固定されている単純作業はRPAの方がシンプルに済む場合もあり、業務の性質によって使い分けます。
- Q. どんな業務でもAIエージェントに任せられますか?
- A. 手順がおおむね決まっていて、例外対応にルールがある業務ほど向いています。判断基準が担当者ごとに異なり文章になっていない業務は、手順の書き出しから始めます。向いているかどうかは、手順を書き出したうえで、例外の割合と、誤った処理を取り消せるかを確かめると見極められます。
- Q. 小さく試してから本格導入するか判断できますか?
- A. はい。一部の業務を切り出したPoC(小規模な検証)から始め、判断の精度や実行にかかる時間を確認したうえで、本格導入するかを判断できます。
- Q. AIエージェントの開発費用はどのくらいかかりますか?
- A. 進め方で桁が変わります。既存SaaSに付属するエージェント機能を使う場合は追加費用なし、ノーコード/ローコードのツールで組む場合は初期0〜数十万円+月額数千円〜数万円+AIの従量課金、個別開発では小規模で500万〜1,000万円、規模が上がると数千万円、保守が月額10万〜30万円または年間で開発費の10〜20%というのが市場の一般的な目安です。費用を決めるのは、任せる判断の幅と連携先システムの数で、他システムを操作させる範囲まで広げると誤作動時の取り消し設計が必要になり、費用が跳ね上がります。
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