公開日: 2026.07.14 / 最終更新日: 2026.10.21
LangChainとは|できることと導入判断の考え方・費用の目安
LangChainとは、生成AIを使ったアプリケーションを開発するためのオープンソースのフレームワークです。できること、AIエージェントやMCPとの関係、発注側が判断すること、内製・外注別の費用の目安を非エンジニア向けに示します。
LangChainとは何か
LangChain(ラングチェーン)とは、生成AI(LLM=大規模言語モデル。文章を人のように理解して処理できる生成AIの中核技術)を使ったアプリケーションを開発するための、オープンソースの開発フレームワーク(アプリケーションの土台となる部品や仕組みをあらかじめ用意したソフトウェア)です。LangChain自体は完成したアプリケーションではありません。開発者がLLMを使ったシステムを作る際に使う「部品箱」のような位置づけで、PythonとTypeScriptで利用でき、フレームワークの利用料はかかりません。
LangChainは、AIエージェントや、LLMを使った業務アプリケーションを開発する際によく使われるフレームワークの一つです。LangChainを使うかどうかは開発会社の技術判断で、発注側が決めるのは対象業務と内製・外注の方針です。発注側がこの名前に触れるのは、開発会社の提案書や見積書に出てきたときがほとんどで、そのとき読み解けるだけの知識があれば足ります。
LangChainで何ができるのか
LangChainが提供する主な機能は次の4つです。
- 複数のLLM呼び出しをつなげる:ひとつの指示に対してLLMを1回呼び出して終わらせず、「情報を要約する→その要約をもとに回答案を作る」といった複数の処理を連続して実行する
- 外部ツール・データとの連携:社内システムやデータベース、検索エンジンなどの外部ツールをLLMから呼び出せるようにする(接続の標準規格であるMCPとの関係は後半で触れる)
- 会話や処理の履歴を記憶する:一度きりのやり取りで終わらせず、これまでのやり取りの文脈を踏まえて次の処理を行う(メモリ)
- 定型的な処理パターンをテンプレート化する:LLMへの指示の組み立て方や、複数ステップの処理の手順など、開発でよく使うパターンを部品として使い回す
どの機能も、LLMを使ったアプリケーションをゼロから作る際に開発者が繰り返し必要とする部品を、あらかじめ用意しています。業務での使われ方としては、社内マニュアルを検索して回答する仕組み(RAG)、問い合わせメールを分類して回答案を作る仕組み、複数システムのデータを集めて報告書の下書きを作るエージェントなどがあります。
LangChainの関連ツール:LangGraphとLangSmith
LangChainの開発元が公開している主なツールは、次の3つです。開発会社の提案書や見積書に名前が出てくることがあるため、役割の違いを知っておくと内容を読み解けます。
- LangChain(オープンソース):さまざまなLLMを使って、エージェントを手早く組み立てるためのフレームワーク
- LangGraph(オープンソース):エージェントの処理の分岐や繰り返しを細かく制御して組み立てるためのフレームワーク
- LangSmith(有料プランのあるプラットフォーム):開発したエージェントの動作の記録、精度の評価、本番運用を支える
LangSmithの料金は、2026年10月時点の公式ページで、無料のDeveloperプラン、1シート月39ドルのPlusプラン、個別見積もりのEnterpriseプランが示されています。DeveloperとPlusは、含まれる記録量を超えると従量課金です。外注する場合は、こうした運用ツールの利用料が開発費と別に毎月かかるかを見積もりの段階で確認します。
LangChainとAIエージェントの関係
AIエージェントは、目的に対して自分で判断し、複数の工程を自律的に実行するAIの仕組みを指す言葉です。LangChainは、そうしたAIエージェントを開発する際に使われる開発基盤(フレームワーク)のひとつです。
「AIエージェントを作りたい」という目的に対して、LangChainは開発を効率化する選択肢の一つで、使わなくてもAIエージェントは作れます。開発会社によっては、案件の要件に応じてLangChain以外のフレームワークを選んだり、フレームワークを使わずに独自に構築したりする場合もあります。どのフレームワークを使うかは、対象業務の要件・連携するシステム・開発チームの知見で変わるため、依頼先の開発会社の技術判断に任せて問題ありません。
LangChainとMCPサーバーの関係
MCP(Model Context Protocol)は、AIと社内システムやデータをつなぐための共通の接続規格で、MCPサーバーはその規格に沿って社内システム側に用意する差し込み口です。LangChainがLLMを使ったアプリケーション開発の「部品箱」であるのに対し、MCPはAIと外部システムをつなぐ「接続口」の標準化という、異なるレイヤーの役割を担っています。LangChainで組み立てたアプリケーションが、MCPを介して社内システムに接続する形で、両者を組み合わせて使うこともあります。
自社導入で判断すべきこと
「自社にLangChainを導入すべきか」という問いから検討を始めると、判断の軸がずれます。LangChainは開発フレームワークで、自社の業務担当者が直接操作する完成品ではありません。発注側が決めるのは次の3点です。
- 自社のどの業務を、AIエージェントやLLMを使ったアプリケーションで効率化したいのか
- その開発を自社の技術チームで内製するのか、外部の開発会社に委託するのか
- 委託する場合、その開発会社がどのような技術選定の考え方を持っているか
フレームワークの選定は開発を担う側の技術判断で、発注側が事前にLangChainを指定する必要は基本的にありません。導入の成否は、フレームワークの種類より、対象業務と成果の基準をどこまで具体的に決めたかで分かれます。
コードを書いて組み立てるLangChainのほかに、Difyのようにノーコード・ローコードで構築できるプラットフォームという選択肢もあります。選択肢ごとの向き不向きは次のとおりで、最終的には対象業務の要件を踏まえて開発会社と決めます。
| 選択肢 | 向いている場合 | 発注側の負担 |
|---|---|---|
| 既製のAIサービス・SaaSの機能 | 要件がサービスの範囲で満たせる | 設定と運用ルールづくり |
| Difyなどのノーコード・ローコード基盤 | 画面上で処理の手順を組める範囲の業務 | 画面での設定・改善を担う人の確保 |
| LangChainなどの開発フレームワーク | 処理の流れを細かく制御する、複数システムと連携する | 要件定義と、開発会社または社内エンジニアの確保 |
LangChainについてのよくある誤解
LangChainの検討で起きやすい誤解は次の3つです。
①LangChainを業務アプリケーションだと考える:LangChainは開発の土台となる部品で、そのまま業務に使えるサービスではありません。業務で使える形にするには、対象業務に合わせた設計・実装が別途必要です。
②フレームワークを使えば精度が上がると考える:フレームワークが提供するのは開発の効率化です。AIエージェントの判断精度や実行結果の品質は、対象業務の設計・データの整備状況で大きく変わります。
③LangChainを使えば開発が速く安くなると考える:開発工数を短縮できる場面はありますが、対象業務の複雑さやシステム連携の数によって、開発期間・費用は変わります。
依頼する場合の進め方
フレームワークの技術選定を開発会社に任せる場合も、発注側が事前に決めることがあります。進め方は次の3段階です。
①現状の把握では、対象業務の手順・判断基準・連携したい社内システムを洗い出し、AIエージェントやLLMアプリケーションとしてどこまで任せられそうかを見立てます。この段階で、LangChainを使うかどうかを含めた技術選定の方向性も決めます。
②実装では、把握した内容をもとに開発を進めます。フレームワークの選定・組み合わせは開発側の技術判断で行い、発注側は対象業務の要件・判断基準のすり合わせに集中します。
③運用では、業務の変化や新しい例外パターンに応じて、判断ルールや連携先のシステムを継続的に見直します。
費用の目安
費用は対象業務の複雑さや連携するシステムの数によって変わりますが、市場の一般的な目安は次のとおりです。特定サービスの確定価格ではありません。
| 進め方 | 費用の目安 | 向いている状況 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 社内エンジニアが内製する | 人件費のみ+AIの従量課金 | 社内に開発できる人がいて、要件も社内で完結する | フレームワークの更新が速く、保守の担当を決める必要がある |
| 外注でPoCから始める | PoCでおおむね100万〜500万円 | 要件が固まっておらず、まず成立するかを確かめたい | PoCの成果物が本番に流用できる形かを確認する |
| 外注で本実装まで行う | 小規模で500万〜1,000万円、規模が上がると数千万円 | 本番運用に耐える精度・監視が必要 | 保守は月額10万〜30万円、または年間で開発費の10〜20%が目安 |
フレームワークを使うことを目的にしないよう注意してください。既製のサービスで要件を満たせるなら、そちらのほうが総コストは下がります。フレームワークが役に立つのは、処理の分岐や例外を自社で細かく制御する必要がある場合です。外注の見積もりでは、LLMのAPI利用料と運用ツールの利用料が、開発費と別に毎月いくらかかるかも確認します。
まとめ:LangChainは業務課題を解くための手段
LangChainは、LLMを使ったアプリケーションやAIエージェントを開発するための代表的なフレームワークで、業務課題を解決する完成品ではありません。導入を検討する際は、「どの業務を、どのような形でAI活用したいか」を最初に決めます。
フレームワークの選定や技術的な組み合わせは依頼先の開発会社に任せ、発注側は対象業務の要件づくりに集中します。AIエージェントの全体像はAIエージェントとは|できることと業務活用の始め方・費用の目安、外部システムとの接続規格はMCPサーバーとは?業務システムをAIに繋ぐ仕組みと開発の選び方に詳しく書いています。
LangChainやAIエージェント導入に関するよくあるご質問はよくあるご質問でも回答しています。
既製サービス・ノーコード基盤・個別開発のどれが合うかは、AIで効率化したい業務の候補が挙がった段階で、awaiが見立てを示せます。
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- Q. LangChainは無料で使えますか?
- A. オープンソースのフレームワークとして公開されており、フレームワーク自体の利用に費用はかかりません。ただし、LangChainを使ってLLMを呼び出す際にはLLM提供元のAPI利用料が別途発生するほか、対象業務に合わせた設計・実装・運用には開発費用がかかります。
- Q. LangChainとAIエージェントは同じものですか?
- A. 異なります。AIエージェントは目的に対して自律的に判断・実行するAIの仕組みを指し、LangChainはそうしたAIエージェントを開発する際によく使われる開発フレームワークのひとつです。AIエージェントの定義と業務での使い方は[AIエージェントとは](/blog/75)にあります。
- Q. 自社にどのフレームワークが向いているかは、誰が判断しますか?
- A. 開発を担当する会社やチームが、対象業務の要件やシステム連携の状況を聞いたうえで、技術的な観点から判断します。発注側でLangChainを指定する必要は基本的にありません。発注側は、対象業務と成果の基準、連携したいシステムの一覧を用意します。
- Q. LangChainを使った開発費用はどのくらいかかりますか?
- A. 市場の一般的な目安として、社内エンジニアが内製する場合は人件費+AIの従量課金のみ、外注でPoCから始める場合はおおむね100万〜500万円、本実装まで行うと小規模で500万〜1,000万円、規模が上がると数千万円、保守は月額10万〜30万円または年間で開発費の10〜20%です。既製のサービスで要件を満たせるならそちらのほうが総コストは下がります。フレームワークを使う意味が出るのは、処理の流れを自社で細かく制御する必要がある場合です。
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