公開日: 2026.04.30 / 最終更新日: 2026.10.21
Shopify B2Bが通常プランに開放|中小卸は何が変わったか
2026年、Shopify PlusのB2B機能が通常プランに開放されました。中小卸売業の経営者が「今なら何ができて、何は依然できないのか」を判断するための整理と、発注前に決めるべき論点を解説します。
2026年4月、Shopifyは会社アカウント・得意先グループ別の価格表・掛け払い・数量ルールといったB2B機能を、Shopify Plus専用から通常プランへ開放しました。従来この機能群を使うにはPlus契約が必要でした。Plusの月額は368,000円から(2026年10月時点の3年契約。1年契約は398,000円)で、プラットフォーム費のみで年440万円を超えます。中小の卸売業には手の届きにくい費用です。この壁が下がったことで、年商数億〜数十億規模の卸にとってB2B EC化の入り口コストは一段軽くなっています。
経済産業省の令和6年度電子商取引市場調査によると、日本のBtoB-EC市場は514.4兆円、EC化率は43.1%です。取引の4割超がすでに電子化されている一方、FAX・電話での受注が中心の中小卸は、この平均から離れたままです。通常プラン開放によって、その差を埋めるための初期投資が下がりました。
判断の基準は、得意先グループ別の価格・掛け払い・最低ロットを、複数のアプリを組み合わせずに標準機能で組めるかどうかです。これが通常プラン開放の意味であり、これまで様子見をしていた卸売業が再検討する理由になります。ただし後述するとおり、日本のB2B商習慣のすべてが標準機能で埋まるわけではありません。
何が通常プランで使えるようになったのか
開放されたのは、法人取引の骨格をなす機能群です。得意先を「会社」として登録し、その会社に紐づく担当者・支払い条件・価格表を管理できます。消費者向けの顧客管理に法人の階層を後付けする必要がなくなりました。
- 会社アカウント: 得意先企業と複数担当者をひとつの取引単位として管理
- 価格表(カタログ): 得意先のグループごとに異なる卸価格を提示(有効なカタログは3つまで)
- 掛け払い・支払期日: 注文時に決済せず、後払い条件を設定
- 数量ルール: 最低ロット・ケース単位・数量刻みの発注制御
これらは2026年4月まで、Plus契約でなければ使えなかった領域です。情報を集める際は、その情報がいつ時点のものかを確認してください。以前の条件をもとに「うちの規模ではShopifyのB2Bは無理」と結論づけていた場合は、現在の条件で見直す余地があります。
ただし、プランによる上限があります。Shopifyのヘルプセンターによると、Basic・Grow・Advancedの各プランで有効にできるカタログはB2Bマーケット全体で3つまでで、特定の会社や拠点へカタログを直接割り当てられるのはPlusに限られます。デポジット(前払い金)の請求や一部支払いといった支払い機能もPlus限定です。得意先ごとに個別の価格を持たせたい会社は、この上限を最初に確かめてください。
それでも標準機能では埋まらない日本の商習慣
一方で、開放されたのはあくまでグローバル標準のB2B機能です。日本の卸売の現場で当たり前になっている商習慣には、標準機能では届かない部分が残ります。
- 掛率での価格管理: 「定価の65掛け」のような掛率ベースの価格体系は、価格表への変換設計が必要
- 締め請求: 月末締め翌月末払いの合算請求書発行は、標準では完結せずアプリや外部サービスで補う
- 与信管理: 取引先ごとの与信枠・限度額管理は、掛け払いサービスとの連携で補う
- 帳票: 日本式の納品書・請求書・受領書のフォーマットはカスタマイズが必要
「通常プランで安く始められる」ことと「追加コストゼロで日本の商流がそのまま載る」ことは別の話です。ここを混同したまま発注すると、見積もり段階で想定外の追加費用に驚くことになります。
通常プランで足りる卸、Plusを検討すべき卸
自社がどちらに当たるかは、次の分岐で判断できます。
- 通常プランで足りる: 得意先数が数百社まで/価格パターンが3種類程度まで(有効なカタログの上限)/当面はEC受注の比率を上げることが目的
- Plusを検討: 得意先ごとに個別の価格表が要る/得意先別カスタマイズが深い/国やブランドごとに複数ストアを持つ/チェックアウト自体の改修や大量のAPI処理が必要
- どちらでも埋まらない: 締め請求・与信・基幹連携は、プランでなくアプリ・外部サービス・カスタム開発の設計問題
プランの選定は、検討すべき論点の一部にすぎません。残りの多くは「どの得意先から載せるか」「掛け払いと締め請求をどう処理するか」「基幹システムと受注データをどうつなぐか」という運用設計にあります。
発注前に社内で決めておくべき3点
開発会社に相談する前に、次の3点は社内で仮決めしておくことを勧めます。ここが白紙のまま見積もりを取ると、金額の幅が大きくなりすぎて比較になりません。
- 価格体系の棚卸し: 得意先別価格が実際に何パターンあるか(感覚でなく販売データで数える)
- 対象取引の範囲: 全得意先を対象にするのか、まず定番品の再注文だけをECに載せるのか
- 請求の扱い: EC側で請求まで完結させるか、請求は従来どおり基幹側で行いECは受注だけにするか
開放で「費用感」はどう変わったのか
費用の変化は、金額の桁で捉えておくと判断を誤りません。従来は、B2B機能を使うために月368,000円からのPlus契約が必要でした。通常プランならBasicの月4,850円からAdvancedの月58,500円まで(いずれも月払い)に収まるため、これまでPlusに固定費として払っていた金額を、掛け払いや締め請求を補うアプリ、基幹システムとの連携といった自社に必要な作り込みへ振り替えられます。開放の意味は、総額が下がることより、固定費の使い先を選べるようになった点にあります。具体的な立ち上げの流れはShopify B2Bサイトの構築手順で解説しています。
一方で、Plusが引き続き担う領域もあります。通常プランへ開放されたのはB2B取引の骨格であり、規模とカスタマイズの上限は依然としてPlusの担当です。両者の機能差は、次のような点にあらわれます。
- チェックアウトの改変: 決済画面を自由に作り替える改修はPlus寄りの領域
- 複数ストア: 国やブランドごとにストアを分けて並行運営するならPlusの守備範囲。翻訳・現地通貨での価格表示・Shopify Marketsは全プランで使えるため、多言語・多通貨の対応ならPlusは要らない
- APIと自動化の上限: 大量の受注を機械的に流すバッチ処理や高頻度の連携はPlusが有利
- サポート・稼働保証: 優先サポートやSLA(サービス品質保証)はPlus契約に紐づく
発注前の確認事項として、費用面でもう一点付け加えます。掛け払いや締め請求を補うアプリには月額課金のものが多く、初期費用に加えて毎月のランニングコストが積み上がります。通常プランの月額が下がっても、必須アプリを数本重ねれば月々の総額はそれなりになります。候補アプリの月額と、それが日本の商習慣のどこを埋めるのかを一覧にしてから見積もりを取ると、Plusとの総保有コスト(買い切りでなく使い続ける前提の総額)の比較が正確になります。
通常プラン開放で注意したい3つの点
発注前に確かめたい点は、次の3つです。
- 「通常プランで安くなった」の裏で、必須アプリの月額が積み上がる。総保有コストではPlusとの差が縮む場合もあり、プランの月額だけを見て決めると想定が狂う
- 掛率と締め請求は、後回しにせず最初に技術検証する論点。定価の65掛けのような掛率体系や月末締め翌月末払いの合算請求は標準では完結せず、ここを詰めずに着工した案件が追加費用でもめる典型パターン
- 開放を、すぐに乗り換える理由にしない。壁が下がったのは事実だが、自社の得意先がECに移るかは別の問題。FAX比率が高いままなら、器を替える前にFAX・電話をどう吸収するかを設計しないと、EC化しても事務は減らない
自社はどちらか:3問で確かめる
通常プランで足りるのか、Plusやカスタムまで要るのか。次の3問でおおよその見立てがつきます。
- Q1. 得意先数は数百社以内で、価格パターンは3種類程度までに収まるか? → YESなら通常プランの標準機能で足りる可能性が高い
- Q2. 締め請求・与信・複雑な掛率が商流に組み込まれているか? → YESならプラン以前にアプリ・外部サービス・カスタムの設計問題
- Q3. 受注データを基幹システム(販売大臣・弥生販売・奉行など)とつなぎたいか? → YESなら連携設計を含めた全体像で見積もる必要がある
Q1だけYESならスモールスタート向き、Q2・Q3にYESが付くほど「プラン選定より運用設計が主役」になります。
自社が「通常プランで足りる会社」か「カスタムが要る会社」かは、価格体系と受注チャネル構成を見れば見立てがつきます。判断材料は、①取引先ごとの掛率が何段階あるか、②承認フローや発注ロットの制限が必要か、③FAX・電話の注文が全体の何割を占めるか、の3点です。③の比率が高い場合は、Web発注の器を整えても社内の処理量は変わらないため、受注のデータ化とセットで考える必要があります。
構築の手順と費用はShopify B2Bサイトの構築手順に、得意先が定番品を繰り返し注文する画面の要件はB2B ECの再注文設計にあります。Amazonビジネスと並べて販路を選ぶ場合は、Shopify B2BとAmazonビジネスの販路比較が判断の材料になります。
得意先別の価格パターンを販売データで数えると、通常プランで足りるかどうかの見当がつきます。awai Buildはその集計と、締め請求やFAX注文をどのアプリ・連携で補うかの設計から、構築と公開後の運用までを担当します。
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- Q. 通常プランで具体的に何ができますか?
- A. 会社アカウント(1社に複数の担当者を紐づける仕組み)、得意先グループごとのカタログ価格(Plus以外のプランは有効なカタログ3つまで)、掛け払い(請求書払い)、数量ルールといったB2Bの骨格機能が使えます。以前は上位プラン専用でした。この4つで足りる会社は、上位プランを契約する必要がなくなりました。自社の要件がこの範囲に収まるかは、取引先ごとの掛率が何段階あるか、承認フローが必要かで判断できます。
- Q. それでもShopify Plusが必要なケースはありますか?
- A. 得意先ごとに個別の価格表を割り当てたい場合、得意先ごとのカスタマイズが深い場合、国やブランドごとに複数のストアを並行運営する場合、購入手続き画面そのものを作り変えたい場合、大量のAPI処理が必要な場合です。判断の順番としては、まず通常プランで要件を満たせないことを具体的に確認してから上位プランを検討してください。「将来必要になるかもしれないから」で上位プランを選ぶと、使わない機能に月額を払い続けることになります。
- Q. 締め請求や掛率は標準機能で対応できますか?
- A. 標準機能では完結しません。得意先ごとの掛率は、掛率のままでなくカタログ価格として設定する形になるため、掛率で運用している会社は価格表への変換が必要です。締め請求(月ごとのまとめ請求)も標準では扱えないため、アプリや基幹システム側での処理を組み合わせるのが実務です。この2点は、要件定義の段階で必ず確認してください。
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