公開日: 2026.07.11 / 最終更新日: 2026.10.21

Shopify BtoBのインボイス対応|適格請求書の発行と保存

Shopify BtoB(卸売)で、インボイス制度の記載要件(登録番号・税率ごとの区分)を満たす請求書を発行・保存する方法を、Order Printer・対応アプリ・基幹連携の3つの進め方と費用の目安で解説します。

登録番号のバッジが付いた適格請求書が、矢印の先のデータベースに保存されていく情景イラスト

Shopifyで受けたBtoB(卸売)の注文にインボイス制度の適格請求書を出すには、標準機能に請求書の仕組みを足す必要があります。注文確認メールや標準の明細は、登録番号や税率ごとの消費税額といった記載要件を満たすようには作られていないためです。方法は、公式の無料アプリ「Order Printer」のテンプレートを作り込む、インボイス対応の請求書アプリを入れる、基幹・会計システムと連携して発行する、の3つです。

どれを選ぶかは、取引先の数、軽減税率の品目が混在するか、締め請求でまとめて発行するかで決まります。あわせて、メールやWebで渡した請求書は電子帳簿保存法に沿って保存します。会計ソフトや紙の請求書では対応できていても、Shopify経由の注文が抜けていて、得意先から「インボイス制度に対応した請求書がほしい」と言われて気づく例もよくあります。

制度全体の記載要件や、締め請求・電子帳簿保存法との関係はインボイス対応を機に受発注を電子化するに詳しく、以降はShopifyで請求書を発行・保存するのに必要な範囲に絞ります。

※費用は要件によって幅のある目安で、特定の会社の確定価格ではありません。制度は改正されることがあるため、最新の要件は国税庁の案内と顧問税理士に確認してください。

Shopifyの標準機能では記載要件を満たせない

Shopifyの注文確認メールや管理画面の標準の明細表示は、そのままでは適格請求書の記載要件(発行事業者の登録番号、税率ごとに区分した対価の合計額と消費税額など)を満たすようには作られていません。カード決済中心の一般消費者向けECを前提にした標準機能であり、BtoBの請求書発行を主目的にしていないためです。Shopifyを使っていても、インボイス対応が自動で済むわけではありません。

適格請求書に必要な6つの記載事項

実装方法を検討する前に、何を載せる必要があるかを確認します。適格請求書の記載事項は次の6つです。Shopifyの注文確認メールや標準の明細に足りていないのは、主に①④⑤です。

  • ① 発行事業者の氏名または名称と、登録番号(T+13桁)
  • ② 取引年月日
  • ③ 取引内容(軽減税率の対象品目である場合はその旨)
  • ④ 税率ごとに区分して合計した対価の額と、適用税率
  • ⑤ 税率ごとに区分した消費税額等
  • ⑥ 交付を受ける事業者の氏名または名称

自社のShopifyから出している明細を1枚印刷し、この6点に赤ペンで印を付けてみてください。足りない項目がそのまま実装のスコープになります。多くの場合、登録番号の記載と、税率ごとの区分表示の2つが不足しています。

Shopifyでインボイス対応を実装する3つの方法

Shopifyでインボイス制度の記載要件を満たす請求書を発行・保存する方法は、大きく3つに分かれます。難易度と費用はおおむね①→③の順に上がります。

① Order Printer(Shopify公式の無料アプリ)でテンプレートをカスタマイズする:Shopifyには「Order Printer」という公式の無料アプリがあり、注文データをもとに請求書・納品書・領収書のテンプレート(Liquidという表示用の言語で書かれたひな形)をカスタマイズできます。ここに登録番号や税率ごとの消費税額区分などの記載要件を組み込みます。税率ごとの合計額と消費税額はLiquidの記述で組み立てるため、軽減税率の品目が混在する場合は作り込みの手間が増えます。取引先が少なく、テンプレートの作り込みに時間をかけられる場合はここから始められます。追加のアプリ利用料がかからないのが利点ですが、記載要件を漏れなく組み込む設計・確認は自分たちで行う必要があります。

② インボイス制度対応をうたう請求書発行アプリと連携する:Shopifyアプリストアには、インボイス制度の記載要件にあらかじめ対応したテンプレートや自動発行機能をうたう有料アプリが複数存在します。登録番号・税率区分の表示や、電子帳簿保存法に沿った保存機能まで含めて提供するものもあります。ゼロから設計し直す手間を省けるのが利点で、月額の利用料が継続コストになります(機能や料金はアプリごとに異なるため、自社の要件と照らして個別に確認が必要です。特定のアプリ名を挙げての優劣評価はここでは行いません)。

③ 基幹・会計システムと連携したカスタム実装:取引先が多く、基幹システムとの連携や締め請求(月ごとのまとめ請求)が絡む規模になると、Shopifyの注文データを基幹・会計システム側に連携し、そちらで適格請求書の発行・保存までを一気通貫に設計します。締め請求と組み合わせた請求書発行は、請求書払い(掛け払い)の導入とセットで検討する会社が多い領域です。手間はかかりますが、インボイス対応と締め請求・入金管理を別々のツールで二重管理しない状態を作れます。

どの方法が向くかは、「取引先の数」「税率が混在するか(軽減税率対象品目を扱うか)」「締め請求のように複数注文をまとめて1枚の請求書にする必要があるか」で変わります。いきなり③を目指す必要はなく、①や②から始めて必要に応じて広げる進め方も十分に選べます。

Shopifyでインボイス対応を実装する3つの道(Order Printerのカスタマイズ・対応アプリ連携・基幹連携カスタム)を難易度と費用の階段で示した図
3つの道は難易度・費用の階段。①②から始めて段階的に広げる進め方も選べる(金額は目安レンジ)

発行とあわせて決める保存の要件(電子帳簿保存法)

メールやWebで請求書をやり取りした場合、そのデータは電子取引に該当し、電子帳簿保存法のルールに沿った保存が必要です。紙に印刷して保存する方法は、電子取引データの保存としては認められません。求められるのは大きく2つです。

  • 真実性の確保:タイムスタンプを付す、訂正・削除の履歴が残るシステムで保存する、または「訂正・削除の防止に関する事務処理規程」を定めて運用する、のいずれか。規程を定める方法なら追加の費用はかからない
  • 可視性の確保:ディスプレイとプリンタで速やかに出力できること、そして検索要件(取引年月日・取引金額・取引先の3項目で検索できること)を満たすこと。ファイル名を「20260930_120000_A商事.pdf」(取引日_金額_取引先)の形式に統一し、税務職員からのデータのダウンロードの求めに応じられるようにする方法も、国税庁が示す対応例の一つ

Shopifyから請求書を発行する仕組みを作っても、保存側を決めずに進めると、後から「保存要件を満たしていなかった」と気づくことになります。発行と保存は同じタイミングで設計してください。

実装を頼む前に決める3つのこと

インボイス対応の実装は、次の3点を事前に決めると、見積りと設計がぶれません。

  • 税率が混在するか:軽減税率(8%)対象の品目を扱っているか。混在する場合、税率ごとに区分した合計額と消費税額を分けて表示する必要がある
  • 請求書の単位:注文ごとに1枚発行するのか、月末締めで複数注文をまとめて1枚にするのか。まとめ発行の場合、登録番号や税率区分は毎回の記載要件を満たしたまま集計する設計が要る
  • 保存方法:発行した請求書を電子で保存するのか、紙で出力して保存するのか。電子でやり取り・保存する場合は電子帳簿保存法のルールが関わるため、発行の仕組みと保存の仕組みをセットで決めると二度手間を防げる

3点とも、技術より自社の請求実務の確認です。経理担当者と受注担当者で現状を書き出すと、どの方法が自社に合うか見えてきます。

費用の目安と、小さく始める考え方

実装費用は、①②③のどこから入るかで桁が変わります。以下は市場の目安であり、特定サービスの確定価格ではありません。

進め方初期費用の目安継続費用の目安向いている状況
Order Printerのテンプレート調整0円(作業工数のみ。外部に依頼する場合は数万円〜)0円取引先が少なく、都度発行で足り、税率が単一
インボイス対応アプリとの連携0〜数万円の初期設定月額数千円〜数万円早く整えたい。保存機能まで含めて任せたい
基幹・会計システムと連携するカスタム実装数十万円〜(連携先の数と締め請求の有無で変動)保守費として月額数万円〜取引先が多い。締め請求がある。入金消込まで一本化したい
インボイス対応の実装コスト(市場の一般的な目安)

最初に判断するのは、都度発行で足りるかどうかです。締め請求が必要な時点で①は選択肢から外れ、②か③になります。税率が混在せず取引先も少ないなら、①で始めて問題が出てから移る進め方で十分間に合います。

Shopifyのインボイス対応でよくある3つの失敗

  • アプリを入れて設定を確かめない:インボイス対応アプリを導入しても、自社の税率構成や請求単位(都度発行か締め請求か)に合わせた設定をしていないと、記載要件を満たさない請求書がそのまま出てしまうことがある。導入後に、実際の注文で出力した請求書を6つの記載事項と突き合わせる
  • 発行と保存がバラバラのまま:請求書は正しく発行できても、保存の仕組み(電子帳簿保存法対応)を別途用意していないと、後から「保存要件を満たしていなかった」と気づくことがある。発行と保存は最初からセットで設計する
  • 免税事業者との取引を見落とす:取引先に免税事業者(適格請求書を発行できない事業者)が含まれる場合、仕入税額控除の扱いが変わる。経過措置は令和8年度税制改正で見直され、2026年9月30日までの仕入れは仕入税額相当額の80%、2026年10月1日から2028年9月30日までは70%、2028年10月1日から2030年9月30日までは50%、2030年10月1日から2031年9月30日までは30%を控除できる(国税庁「インボイス制度に関するQ&A」問113-3)。2026年10月に80%から70%へ下がったため、免税事業者からの仕入れがある場合は経理側で処理を切り替える。Shopifyの実装では解決しない論点なので、顧問税理士と確認する

着手の手順は、①自社の明細を1枚印刷して6つの記載事項と突き合わせる、②都度発行か締め請求かを決める、③保存方法(システムか事務処理規程か)を決める、の3つです。この3点が決まれば、3つの方法のどれを選ぶかが絞られます。経過措置の割合のように制度は見直されるため、実装後も国税庁の案内を定期的に確かめてください。

都度発行か締め請求か、税率が混在するかが決まれば、残るのは実装と保守です。Order Printerのテンプレートの作り込み、請求書アプリの設定、基幹・会計システムとの連携を、awai Build(中小メーカー・卸向けの自社EC伴走支援)が開発と保守運用の範囲で引き受け、実際の注文で出力した請求書と6つの記載事項の突き合わせまで行います。

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よくある質問

Q. Shopifyの標準機能だけでインボイス制度に対応できますか?
A. 標準機能のままでは対応できません。注文確認メールや標準の明細は、登録番号や税率ごとの消費税額の区分表示といった適格請求書の記載要件を満たすようには作られていないためです。無料の公式アプリ「Order Printer」でテンプレートをカスタマイズする、インボイス対応をうたう有料アプリと連携する、基幹システムと連携してカスタム実装する、の3つの方法のいずれかで対応を組み込みます。
Q. Order Printerと有料のインボイス対応アプリ、どちらを選べばよいですか?
A. 取引先が少なくテンプレートの作り込みに時間をかけられるならOrder Printer(無料)から、記載要件への対応をあらかじめ組み込んだ状態で早く始めたいなら有料アプリとの連携が向きます。取引先の数や締め請求の有無、税率が混在するかどうかで判断が変わるため、都度発行か締め請求かを決めてから選んでください。
Q. 月末締めでまとめて発行する請求書(締め請求)にも対応できますか?
A. 対応できますが、都度発行より設計の難易度が上がります。締め期間内の複数注文を1枚の請求書にまとめつつ、登録番号や税率区分の記載要件を毎回満たす必要があるためです。締め請求が絡む場合は、請求書払い(掛け払い)の実装や基幹システム連携とあわせて設計することが多い領域です。
Q. 費用と期間の目安を教えてください。
A. 市場の一般的な目安として、Order Printerのテンプレート調整は作業工数のみ(外部に依頼する場合は数万円〜)で継続費用なし、インボイス対応アプリとの連携は初期0〜数万円+月額数千円〜数万円、基幹・会計システムと連携するカスタム実装は初期数十万円〜+保守月額数万円〜という水準です。期間はテンプレート調整なら数日、アプリ連携で1〜2週間、基幹連携を含むと1〜3か月が目安になります。いずれも要件によって変動するレンジで、確定額ではありません。
Q. 発行した請求書は紙に印刷して保存すればよいですか?
A. メールやWebでやり取りした請求書は電子取引に該当し、紙に印刷して保存する方法は電子取引データの保存としては認められません。電子データのまま、真実性の確保(タイムスタンプ、訂正削除履歴が残るシステム、または事務処理規程の運用のいずれか)と、可視性の確保(速やかな出力と、取引年月日・取引金額・取引先での検索)を満たす形で保存する必要があります。事務処理規程を定めてファイル名の付け方を統一する運用であれば、追加費用なしで要件を満たせます。

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