公開日: 2026.09.24 / 最終更新日: 2026.09.24
カート離脱率の改善|入力フォームで落ちる画面の見つけ方と直す順番
自社ECのカート離脱率を、購入手続きの入力フォームの見直しで下げる手順を解説。どの画面で落ちているかを新しい道具なしで見つける方法、管理画面で直せる項目、少人数で進められる直し方と効果の確かめ方を示します。
カートに商品は入っているのに、注文が入りません。管理画面を開くと、カートに入れられた件数はそれなりにあるのに、購入の件数はその何分の一かにとどまります。自社ECを始めて数か月たつと、多くの担当者がこの数字に向き合います。カート離脱率(カートに商品を入れた人のうち、購入まで進まなかった人の割合)は、商材や端末の構成によって幅がありますが、どの店舗でも一定の割合で発生します。
このうち購入手続きの入力フォームで落ちている分は、次の手順で減らせます。購入手続きを4つの画面に分けて通過件数の落差が最大の区間を見つけ、送料・納期の表示、会員登録の必須、必須項目の数、入力補助、エラー表示、支払い手段の順に、1回に1〜2項目ずつ直します。効果は率より件数で、同じ曜日に4週間見て確かめます。入力フォーム(住所や支払い情報を入力する購入手続きの画面)で直す項目の多くは、新しい道具を入れなくてもカートサービスの設定とテーマの編集で変えられます。
カート離脱率は「どの画面で落ちたか」まで分けないと打ち手が決まらない
カートに入れた後の離脱は、大きく2つに分かれます。1つ目は、購入手続きに入る前に判断を保留した人です。他社と比べている最中、社内の承認を待っている、といった理由は買い手の側にあり、画面を直しても消えません。送料や納期、使える支払い方法が分からずに保留した人は例外で、カート画面に表示を足すと減ります。2つ目は、購入手続きに入ったものの、入力の途中で止めてしまった人です。会員登録を求められた、入力欄が多すぎた、エラーが出たが何を直せばいいか分からなかった、といった理由は店舗側の画面の問題で、設定を変えれば今週にも減らせます。同じ「カート離脱」という言葉でまとめてしまうと、この2つに同じ打ち手を当ててしまいます。
この記事が扱うのは2つ目、入力フォームで落ちている分です。ここから始めるのには理由があります。多くの項目が自社のカートサービスの設定画面で直せること、新しい費用が発生しないこと、そして直した前後の件数で効果を測れることです。1つ目の「判断を保留した人をあとから呼び戻す」打ち手は、画面の改修でなく、メールが受け持つ仕事になるため、カゴ落ち対策|リカバリーメールの配信タイミングと効果の測り方で別に扱っています。
手をつける前に、自社の購入手続きがいくつの画面に分かれているかを確認してください。多くのカートサービスでは、カート画面、お客様情報の入力、配送先と配送方法、支払い情報の入力と確定、という4つの区切りになっています。1ページの中で段が分かれている形式でも、区切りの数え方は同じです。この4つのどこで人が減っているかを特定するところから始めます。
まず出す2つの数字|カート離脱率と、画面ごとの通過件数
カート離脱率の出し方は単純です。(カートに商品を入れた人数 − 購入した人数)÷ カートに商品を入れた人数 × 100 で求めます。相場の目安は、海外の調査機関 Baymard Institute が50件の調査結果を集計した平均で約70%です。ただし商材、価格帯、スマートフォンとパソコンの比率によって前後します。他社の平均と比べて一喜一憂するより、自社の数字を毎週同じ方法で出し、その推移を見るほうが役に立ちます。
ただし、率だけでは直す場所が決まりません。必要なのは、購入手続きの画面ごとの通過件数です。GA4(Googleアナリティクス4)のeコマース計測が入っていれば、購入手続きの開始、配送情報の入力、支払い情報の入力、購入完了という4つの節目の件数が並びます。この件数の落差が最も大きい区間が、最初に直すべき画面です。計測がまだ入っていない場合は、GA4のECサイト設定|eコマース計測を入れる順番と確認方法の手順で、直す作業より前に入れてください。設定前にさかのぼってデータを取ることはできないため、計測が遅れるほど、直した前後を比べられる期間も短くなります。
件数を見るときは、スマートフォンとパソコンを分けてください。入力の負担は端末で大きく違い、住所や電話番号の入力、カード情報の打ち込みは、画面の小さい端末ほど落ちやすくなります。全体の数字では平均されて見えなくなる落差が、端末別に分けた瞬間に出てくることがあります。分けた結果、落差の大きいほうの端末から直せば、同じ作業量で戻る件数が増えます。
どの画面で落ちているかの見つけ方|新しい道具を入れずにできる3つ
落ちている画面を絞り込むのに、専用のツールを先に契約する必要はありません。次の3つは、いま持っているもので今週中にできます。
- 画面ごとの件数を並べる:GA4のeコマース計測で、購入手続きの開始から購入完了までの4つの節目の件数を、1週間単位で並べます。落差が最大の区間を1つだけ選びます。Shopifyのようにカートサービスの標準連携でGA4へイベントが送られる場合は、追加の実装なしで主な節目の件数が並びます。送られるイベントの種類はサービスや時期で変わるため、4つの節目がそろっているかをGA4のレポートで確認します
- 自分のスマートフォンで1件、最後まで買ってみる:会員登録を求められるか、郵便番号から住所が入るか、電話番号の欄で数字のキーボードが出るか、わざと間違えたときに何を直せばいいか分かるか。指が止まった場所と、その理由をそのままメモします。注文の少ない曜日に月1回行えば、件数の数字が指す中身が具体的になります
- 完了しなかった問い合わせを読み返す:「カードが通らない」「後払いはないか」「送料はいくらになるか」といった連絡を、1か月分さかのぼって読みます。件数は少なくても、離脱の理由が買い手の言葉のまま残っている、最も具体的な材料です
無料で使えるヒートマップや操作の録画ツールを後から足せば、どの入力欄でスクロールが止まったかまで見えるようになります。ただし、導入と設定に時間を使ううちに直す作業が止まってしまうことがあるため、導入は後にします。上の3つで「最初に直す画面」を1つ決めるところまでは十分たどり着けます。
新しい道具を入れずに直せる入力フォームの項目
入力フォームの見直しと聞くと専用のツールが必要に思えますが、成果につながりやすい項目の多くは、カートサービスの設定画面やテーマ(サイトの見た目を決める雛形)の編集で直せます。落ちている画面が絞れたら、その画面に当たる行から手をつけてください。
| 見直す項目 | 起きている離脱 | 直し方の目安 | どこで直すか |
|---|---|---|---|
| 会員登録の必須 | 登録を求められた時点で閉じる | ゲスト購入を有効にする。会員の特典は購入完了後に案内する | 設定画面 |
| 必須項目の数 | 入力の途中で手が止まる | 発送に使っていない必須(会社名・ふりがな・生年月日など)を任意に戻す | 設定画面 |
| 住所の入力 | 番地まで手で打つ負担で離れる | 郵便番号からの住所自動入力を有効にする | 設定画面またはテーマ |
| 入力補助の設定 | 端末に保存された情報が呼び出せない | 自動入力の指定を有効にし、電話番号やカード番号の欄で数字のキーボードが出るようにする | テーマの編集 |
| エラーの見せ方 | 何を直せばよいか分からず諦める | 入力欄のすぐ下に、直し方が分かる言葉で出す。送信後にまとめて出さない | テーマの編集 |
| 送料・納期の表示 | 合計金額が分からず保留する | カート画面の時点で送料の目安と発送までの日数を出す | 設定画面 |
| 支払い方法 | 使いたい手段がなく離れる | 問い合わせで名前の挙がる手段を1つだけ足す | 設定画面またはアプリ |
| 手続き画面のリンク | 途中で別のページへ離れて戻らない | 購入手続きの画面ではヘッダーのメニューや特集バナーを外す | テーマの編集 |
項目を減らすときの注意点は、減らしすぎないことです。卸・メーカーの自社ECでは、会社名や部署名が請求書の宛名や与信の確認に使われていることがあります。必須を外す前に、その項目が社内のどの業務で使われているか(配送・請求・与信・同梱物の宛名など)を1項目ずつ確認してください。使われていないと分かった項目に限って任意に戻せば、入力の負担は減り、業務は止まりません。
直す順番|手続きに入る前の情報から、入力中の摩擦へ
直す項目が並んだら、手をつける優先度を決めます。考え方は、購入手続きに入る前に判断を止めている要因を先に、入力中の細かい摩擦を後に直すことです。手続きに入る前の要因を残したまま入力欄だけを整えても、そもそも手続きに入らない人には届かないためです。
- ①送料・納期・支払い方法を、手続きに入る前に見せる:カート画面で送料の目安と発送までの日数、使える支払い方法を出します。合計金額が読めないことが保留の理由になっている場合、この表示の追加で通過件数が動きます
- ②会員登録の必須を外す:ゲストのまま購入できるようにします。会員化は購入完了の画面やその後のメールで案内すれば、注文を落とさずに進められます
- ③必須項目を減らす:発送に使っていない必須を任意に戻します。1画面あたりの入力欄が少ないほど、入力を始めるまでの心理的な負担が軽くなります
- ④入力を補助する:郵便番号からの住所自動入力、端末の自動入力の指定、数字のキーボードの指定、あと何段で終わるかの表示。手を動かす量そのものを減らす調整です
- ⑤エラーの見せ方を直す:入力欄のすぐ下に、何をどう直せばよいかを日本語で出します。送信後にページの先頭でまとめて出す形式は、どこが違うのか分からず離脱の原因になります
- ⑥支払い手段を足す:問い合わせで名前の挙がるものを1つ足します。手数料と入金の時期に影響するため、経理と合わせてから決めます
1回に直すのは1〜2項目までにして、効果を確かめる4週間は次の変更を入れないでください。一度にまとめて変えると、通過件数が動いたときにどの変更の結果なのか分からなくなり、次に何をすべきかが決められなくなります。4週間に1〜2項目のペースでも、半年で6〜12項目は進みます。兼務の担当者にとっては、この速度のほうが最後まで続きます。
直した効果の確かめ方|率ではなく件数を、同じ曜日に見る
直したあとに見るのは、直した画面の前後の通過件数と、購入手続きの開始から購入完了までの件数です。率で見たくなりますが、1日の訪問が数十人という規模では、1件の増減で率が大きく振れてしまい、変更に効果があったかどうかの判断材料になりません。件数で見るほうが、少ない訪問数でも変化を読み取れます。
- 週に1回・同じ曜日に見る:曜日によって注文の入り方が違うため、見る曜日を固定します
- 端末別に分ける:直した項目の効果がスマートフォンに偏ることはよくあります
- 直した日をメモに残す:どの週に何を変えたかが残っていないと、あとから件数の動きと突き合わせられません
- 最低4週間は判断を待つ:1〜2週間の増減は通常のばらつきの範囲に収まることが多く、そこで元に戻すと何も分からなくなります
4週間見ても件数が動かなかった場合、それは「直した項目が、自社の店舗での詰まりではなかった」という結果です。変更を元に戻す必要はありません。入力欄が減って困る買い手はいないためです。落差の次に大きい画面へ移り、同じ手順を繰り返してください。1周して詰まりが見つからなければ、離脱の理由は画面の外にある可能性が高く、商品ページ側の情報が足りているかを商品ページの構成と並べる順番|自社ECの基本の型と直す優先順位で確認する番になります。
フォームを直しても残る離脱|どこまでが入力フォームの仕事か
購入手続きの画面を整えても、離脱がゼロになることはありません。他社と比べている途中、社内の承認を待っている、次回の発注分とまとめたい。こうした理由の離脱は、画面の作りと関係なく、買い手の側で判断が終わっていないために起きます。入力フォームの見直しが減らせるのは、あくまで「買う気はあったのに、入力の途中で止めてしまった分」です。この線を引いておくと、効果が頭打ちになったときに、画面をこれ以上いじるべきか、別の打ち手へ移るべきかを判断できます。
判断が終わっていない人に、あとから思い出してもらう打ち手は、メールの領域になります。その設計はカゴ落ち対策|リカバリーメールの配信タイミングと効果の測り方にまとめてあるため、本記事で入力フォームを一巡整えたあとの次の一手として読んでください。画面の詰まりを先に取り除いてからメールを組むと、呼び戻した人を同じ場所でもう一度落とさずに済みます。
まとめ:落ちる画面を1つ決め、1〜2項目ずつ直し、件数で測る
カート離脱率の改善は、施策の数より、落ちている画面を特定してから手を動かすかどうかで結果が変わります。購入手続きを4つの画面に分け、件数の落差が最大の区間を1つ選びます。その画面に当たる項目を、手続きに入る前の情報から入力中の摩擦へという順番で、1回に1〜2項目ずつ直します。効果は率ではなく件数で、同じ曜日に、端末別に、4週間見ます。専用のツールを入れるかどうかは、この一巡が終わってから判断しても遅くありません。
画面ごとの通過件数を出すGA4の計測設定、入力フォームの設定変更とテーマの修正、4週間ごとの件数の見直しは、awai Build(中小メーカー・卸向けの自社EC伴走支援)の保守運用とデータ分析の範囲で引き受けます。購入手続きの前後にある商品ページやリピートの設計まで含めた支援の内容は、awai Buildのサービス詳細をご覧ください。
自社ECの「作り方」も「伸ばし方」も、30分の無料相談で一緒に整理します作り方・予算のかけ方・マーケの知見・広告運用のうち、どれか一つが欠けていても、良い商品は売上につながりません。現状のEC・SNS・顧客データをうかがい、どこから伴走を始めるべきかをその場でご案内します。よくある質問
- Q. カート離脱率はどのように計算しますか?
- A. (カートに商品を入れた人数 − 購入した人数)÷ カートに商品を入れた人数 × 100 で求めます。相場の目安は、海外の調査機関 Baymard Institute が50件の調査を集計した平均で約70%ですが、商材や価格帯、スマートフォンとパソコンの比率でかなり前後します。他社の平均と比べるより、自社の数字を毎週同じ方法で出して推移を見るほうが判断に使えます。
- Q. 入力項目はどこまで減らしてよいですか?
- A. 発送・請求・与信のいずれにも使っていない項目は任意に戻して構いません。逆に、卸・メーカーの自社ECでは会社名や部署名が請求書の宛名や与信の確認に使われていることがあるため、外す前に社内のどの業務で使っているかを1項目ずつ確認してください。使っていないと確認できた項目だけを外せば、入力の負担は減り、後工程の業務は止まりません。
- Q. 会員登録を必須にしないと、顧客情報が集まらないのではありませんか?
- A. 購入時点では、注文を受けるために必要な情報(氏名・住所・連絡先)は取得できています。会員登録は、購入完了の画面やその後のメールで案内する形でも進められます。登録を購入の前提にすると、登録の手間を理由にした離脱が購入そのものを止めてしまうため、まずゲスト購入を通し、会員化は購入後に案内する形を勧めます。
- Q. 入力フォーム最適化のツールは入れたほうがよいですか?
- A. 入れる前に、この記事で挙げた設定画面やテーマで直せる項目を一巡してからの判断で間に合います。ツールが得意なのは、どの入力欄で手が止まったかを細かく記録することですが、記録が増えても直す項目が増えるわけではありません。設定で直せる範囲を直しきっても通過件数が動かない場合に、細かい記録が必要かどうかを検討すれば無駄がありません。
- Q. どの画面で落ちているかは、無料の範囲で分かりますか?
- A. 分かります。GA4のeコマース計測を入れると、購入手続きの開始、配送情報の入力、支払い情報の入力、購入完了の4つの節目の件数が並び、落差が最大の区間が見えます。あわせて、自分のスマートフォンで実際に1件購入してみて手が止まる場所をメモし、注文に至らなかった問い合わせを1か月分読み返せば、件数が示す詰まりの中身まで具体的になります。
- Q. 直した効果は、いつ判断すればよいですか?
- A. 最低4週間は待ってください。1〜2週間の増減は通常のばらつきに収まることが多く、そこで元に戻すと何も分からなくなります。見るのは率ではなく件数で、週に1回・同じ曜日に、スマートフォンとパソコンを分けて確認します。4週間動かなければ、その項目は自社の詰まりではなかったという結果なので、変更は戻さず、落差の次に大きい画面へ移ってください。
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