公開日: 2026.07.12 / 最終更新日: 2026.10.21

賞味期限・ロット管理の自動化|先出し(FEFO)と追跡の進め方

食品卸・理美容材料卸・介護用品卸の賞味期限・ロット管理を自動化する手順を説明します。入荷時の期限とロットの読み取り、先出し(FEFO)を守る棚と出荷指示の変え方、回収時の追跡、費用の目安まで扱います。

期限ラベルを貼った木箱の山とカレンダーが並び、右の机では台帳と表計算に同じ期限を二重に書き写している情景イラスト

賞味期限・ロット管理の自動化は、①入荷時に期限とロット番号をデータとして取り込む、②ロットごとに置き場所を分け、出荷指示書に出すロットを印字する、③期限が近いロットを品目区分ごとのしきい値で通知する、④出荷伝票にロット番号を残して追跡できるようにする、の4つで成り立ちます。期限が早いものから出す先出し(FEFO:First Expired, First Out)は、データの整備と棚の配置のどちらか一方では守れず、両方を同時に変える必要があります。

4つのうち、①の取り込み方法は仕入先の外箱にバーコードが印字されているかで選び、②の置き場所と出荷指示書の変更はシステム投資なしで今週から始められます。費用は、表計算の台帳を整える方法から入荷時の読み取りを個別に構築する方法まで幅があり、品目数と仕入先ごとの書式のばらつきで決まります。

期限切れの廃棄が起きる原因:Excelと目視の管理が限界を迎える場面

食品卸・理美容材料卸・介護用品卸のように多品目・多ロットの商品を扱うBtoB卸では、期限とロットの管理を避けて通れません。それでも、棚の奥に押し込まれた古いロットに気づかないまま時間が経ち、気づいたときには期限切れで廃棄している、という事態はよく起きます。

原因は、期限に気づくタイミングが特定の担当者の記憶と経験に依存していることです。入荷のたびにロットが増え、棚の奥から手前まで期限の違う商品が混在すると、目視と記憶で先出し順を守り続けるのは難しくなります。担当者が変われば確認の精度が落ち、繁忙期には見落としが増えます。欠品も「気づいたときには販売機会を逃している」という同じ型の課題で、欠品を防ぐ予兆管理(発注点・安全在庫の計算式)にある兆候の捉え方は、期限切れを早く察知する場面でも参考になります。

判断の材料になる情報が、現物とExcel台帳の間で分かれて存在していることも属人化の原因です。典型的には、次の4つの場面で限界が来ます。

  • 入荷のたびに、納品書や現品ラベルに印字されている賞味期限・使用期限・ロット番号をExcel台帳へ手作業で転記しており、品目数が増えるほど転記漏れ・入力ミスが増える
  • 出荷時にどのロットから出すかは台帳を開かないと分からず、忙しい時間帯は現物の見た目や記憶で判断され、先出し順が守られない
  • 品質上の理由で自主回収(リコール)が必要になった場合、どのロットがどの得意先へいつ出荷されたかを台帳から追うのに時間がかかり、初動が遅れる
  • 台帳の更新と照合が特定の担当者の経験と勘に依存しており、その担当者が不在・退職すると期限管理の精度が落ちる

期限・ロットの情報をデータとして持たないまま担当者の経験に頼って処理を続ける限り、人を増やしてもこれらの問題は解消しません。複数の仕入先・出荷先をまたいで在庫を持つ卸であれば、複数モールの在庫連携を自動化する方法|在庫ズレの原因とマスタ統合にある「情報が分散して二重管理になる」課題とも根が同じです。

入荷時に期限・ロット情報をデータとして取り込む方法

入荷時に期限とロット番号を取り込む方法は、主に3つあります。仕入先の外箱やケースにGS1-128(商品コード・期限・ロット番号などを1本で表せる物流用のバーコード)が印字されていればハンディスキャナで読み取り、印字がなければ納品書や現品ラベルの画像をAIで読み取ります。件数が少なければ、入力ルールを決めた手入力でも足ります。

取り込み方法向いている状況注意点
バーコードの読み取り(GS1-128など)仕入先の外箱やケースに、期限・ロット番号入りのバーコードが印字されている印字の有無は仕入先ごとに違うため、対応していない仕入先の分は別の方法で補う
納品書・ラベル画像のAI読み取り仕入先ごとに伝票やラベルの書式が違い、入荷件数が多い手書きやかすれた印字では精度が下がるため、人が確認する範囲を決める
入力ルールを決めた手入力品目数が限られ、入荷の頻度も高くない入力の担当者と期限の書式(年月日か年月か)をそろえないと、後から検索できない
入荷時に期限・ロット番号を取り込む3つの方法

どの方法を選んでも、目標は期限を自動で判断する専用ソフトを入れることより、散らばった期限・ロットの情報をデータとして残すことにあります。先出しや出荷可否の判断材料を担当者に渡せれば十分で、最終的な出荷可否は取引先ごとの納品期限条件を踏まえて人が判断します。

食品では、製造日から賞味期限までの期間の3分の1以内に小売店へ納品する商慣習(いわゆる3分の1ルール)があり、農林水産省は2分の1への緩和を呼びかけています。取引先によって納品期限が違うため、ロットの期限とあわせて得意先ごとの納品期限もデータとして持たせると、出荷できるロットを機械的に絞り込めます。

あわせて、どの単位で期限を持つかを決めます。ロット単位か、入荷ロット×拠点単位か、ケース単位か。ここを決めずに読み取りを始めると、データはたまるのに引当や出荷順の判断には使えない状態になります。

現品ラベルや手書き伝票の書式は仕入先ごとに違うことが多く、AIの読み取り精度はフォーマットや印字の状態で変わります。「精度◯◯%」といった数字をそのまま自社に当てはめず、自社の伝票で試して確かめてください。導入後の使い勝手を左右するのは、どこまで自動で読み取り、どこを人が確認するかの切り分けです。

先出し(FEFO)を守るには、棚とデータの両方を変える

期限データを持つだけでは、古いロットは動きません。先出しが守られている倉庫では、データの整備と同時に現物の置き方も変えています。

  • ロットごとに置き場所を分ける:同じ品番でも入荷ロットが違えば別の位置に置き、棚に入荷日または期限を大きく表示する。奥に押し込まれた古いロットは、物理的な配置で防ぐ
  • ピッキング指示に期限を載せる:出荷指示書に「どのロットを出すか」を印字する。担当者が台帳を見に行く運用は、忙しい時間帯に崩れる
  • 期限が近いロットのしきい値を決める:残存期間が何日を切ったら通知するかを、品目区分ごとに決める。全品目一律にすると通知が多すぎて無視される
  • 止めた在庫の扱いを決める:期限が近くて通常出荷できないロットを、値引き販売・特売ルート・返品交渉・廃棄のどれに振り向けるか、判断の期限とともに決める。ここが空白だと、結局は期限切れまで棚に残る

4つのうち最初の2つは、システム投資をせずに今週から始められます。通知の仕組みを検討するのは、置き場所と指示書を変えても漏れが残ると分かってからで十分です。

トレーサビリティ|回収が必要になったときに何分で追えるか

期限管理を整えるもう一つの理由が、追跡です。品質上の理由で自主回収が必要になったとき、「どのロットが、いつ、どの得意先へ、いくつ出荷されたか」を追えるかどうかで初動の速さが決まります。次の3点を確認してください。

  • 入荷側の記録:仕入先・入荷日・ロット番号・数量が、品番と紐づいて残っているか
  • 出荷側の記録:出荷伝票にロット番号が残っているか。ここが抜けていると、入荷側を整えても出荷先までは追えない
  • 追跡にかかる時間:1品番を選び、入荷から出荷先まで遡ってみる。台帳とExcelをまたいで30分以上かかるなら、回収が必要な局面では間に合わない

進め方(4フェーズ)

賞味期限・ロット管理の整理・構造化を現状の把握・PoC・実装・運用の4フェーズで示し、散在する納品書・現品ラベルからAIによる期限・ロット番号の認識、構造化データ化、先出し順管理・台帳更新への活用までを一体で示した図解
品目・仕入先すべてを一気に対象にせず、現状の把握→PoC→実装→運用の段階を踏んで進める

品目・仕入先のすべてを一度に対象にせず、段階を踏んで進めると、読み取り方法や運用ルールの手戻りを小さくできます。

①現状の把握では、賞味期限・ロット情報がどこに(紙の納品書・現品ラベル・Excel台帳など)、どんな書式で存在しているかを洗い出し、どこまで自動で読み取れて、どこに人の確認が必要かを見立てます。

②PoC(概念実証。小規模に試して効果を確認する工程)では、一部の仕入先・商品カテゴリに絞り、手元の納品書・現品ラベルの画像で期限・ロット番号の読み取りを試します。認識精度と、人による確認・修正がどの程度必要になるかを確かめる段階です。

③実装では、PoCで見えた精度と運用範囲を踏まえて対象カテゴリを広げ、読み取った期限・ロット情報を、先出し順の管理や既存の台帳・倉庫管理の仕組みにつなげられる形で蓄積します。

④運用は、新規入荷のたびに読み取り精度を保ち、新しい仕入先の追加などフォーマットの変化に応じて、読み取りの対象と確認ルールを見直す工程です。

費用の目安

費用は対象品目数・仕入先数・現品ラベルや伝票の書式のばらつきで変わります。以下は市場の一般的な目安で、特定サービスの確定価格ではありません。

進め方初期費用の目安継続費用の目安向いている状況
表計算での台帳管理を、入力ルールを決めて整える0円(作業工数のみ)0円品目数が限られ、入荷の頻度も高くない
ロット・期限管理に対応した在庫管理システムの利用0〜数十万円の初期設定月額1万〜5万円程度(品目数・拠点数で変動)標準的な運用に自社を合わせられる
入荷時の読み取りから基幹連携まで個別構築対象範囲により変動保守として月額数万円〜仕入先ごとに伝票・ラベルの書式が異なる
期限・ロット管理の仕組み化にかかる費用の目安(市場の一般的な水準)

見落とされやすいのは、仕組みを入れても「入荷時に誰がいつ読み取るか」を決めなければ運用が始まらない点です。読み取りの担当と手順を決める作業は、ツール選定の前に済ませます。

まとめ:期限・ロット管理は入荷時のデータ化から始める

期限・ロット管理が特定の担当者の記憶に頼っている、気づいたときには期限が過ぎていて廃棄している、という状態なら、原因は担当者の注意力不足より、納品書や現品ラベルにある期限・ロット情報がデータになっていないことにある可能性があります。入荷時のデータ化、棚と出荷指示の変更、出荷伝票へのロット記録の3つから着手してください。

期限とロットの情報がどの紙やファイルにどんな書式で残っているかを洗い出す①現状の把握は、awaiが手元の納品書やラベルを見ながら手伝えます。期限が近いロットを値引き販売に回すときの、自社ECで売り切るための商品ページや告知の用意もあわせて相談できます。

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よくある質問

Q. 賞味期限・ロット管理の自動化とは、AIが自動で先出し順を判断してくれる専用アプリを導入するということですか?
A. 専用アプリの導入に限りません。中心になるのは、納品書・現品ラベル・仕入先のPDFなどにある賞味期限・使用期限・ロット番号を、バーコードやAIの読み取りでデータにする工程です。どのロットから出荷するかの最終的な運用ルールは、既存の台帳や倉庫管理の仕組みと組み合わせて設計します。ロット・期限管理に対応した在庫管理システムを使う方法もあり、品目数と運用をどこまで標準に合わせられるかで選びます。
Q. 手書きの伝票や、印字がかすれた現品ラベルでも読み取れますか?
A. 書式・印字の状態によって精度は変わります。手書きやかすれた印字では読み取り精度が下がるため、PoC(概念実証)の段階で手元の伝票・ラベルを使って精度を確かめ、読み取りが難しい項目は人が確認する運用と組み合わせます。精度は伝票の状態に左右されるため、導入前に自社の伝票で試す工程は省けません。
Q. すでに使っているExcel台帳や倉庫管理システムは置き換える必要がありますか?
A. 置き換えは必須ではありません。既存のExcel台帳や倉庫管理システムを活かしたまま、そこに期限・ロットのデータを反映する進め方ができます。品目数や拠点が増えて台帳の更新が追いつかなくなった段階で、ロット・期限管理に対応した在庫管理システムへの移行を検討します。
Q. 賞味期限・ロット管理の自動化には、どのくらいの期間・費用がかかりますか?
A. 市場の一般的な目安として、表計算の台帳を入力ルールを決めて整える方法は費用0円・1〜2週間、ロット・期限管理に対応した在庫管理システムの利用は初期0〜数十万円+月額1万〜5万円程度、入荷時の読み取りから基幹連携まで個別構築する場合は対象範囲に応じた初期費用+月額保守で、期間は1〜3か月が目安です。費用の前に決めるのは「入荷時に誰がいつ読み取るか」で、ここが決まっていないとどの方法でも運用が始まりません。
Q. 先出しのFEFOとFIFOは何が違いますか?
A. FIFO(First In, First Out:先入れ先出し)は入荷の早いものから出す考え方で、FEFO(First Expired, First Out)は期限の早いものから出す考え方です。仕入先によって製造日が違うと、入荷順と期限順が一致しないことがあります。賞味期限・使用期限のある商材では、期限の早いロットから出すFEFOで管理します。

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