公開日: 2026.06.27 / 最終更新日: 2026.10.21

欠品対策は予兆管理から|発注点・安全在庫の計算式とチェック表

欠品対策の基本は、発注リードタイムを踏まえて在庫が切れる前に発注することです。発注点・安全在庫の計算式と計算例、出荷ペースで予兆を掴む方法、欠品時の記録項目とチェック表を解説します。

倉庫の棚に空いた1区画と、欠品の予兆を示す下降グラフを前に確認している担当者の情景イラスト

商品は注文してから届くまでに時間がかかります。この時間差(発注リードタイム)があるため、棚がゼロになってから発注しても欠品は避けられません。

対策の基本は、在庫が「リードタイム中に売れる量+安全在庫」(発注点)を割った時点で発注する方式です。そのうえで出荷ペースの変化と入荷予定を見て、発注点を調整します。発注点と安全在庫は表計算で求められるため、以下、計算式と計算例、予兆の掴み方、欠品したときの記録、始める手順を順に示します。

欠品は発注リードタイムの分だけ前に決まる

リードタイムという時間差

発注から入荷までのリードタイムが14日の商品なら、今日の発注判断は「14日後の棚」を決めています。14日後に欠品しそうな商品は、今日発注しなければ間に合いません。予兆管理とは、この時間差を踏まえて在庫を見る方法です。

発注点の考え方

教科書的な基本は発注点方式です。発注点は「リードタイム中に売れる見込み量+安全在庫」で決まります。1日平均10個売れる商品でリードタイム14日なら、リードタイム中の需要は140個。在庫がこの水準+安全在庫を割ったら発注する、というルールです。

安全在庫:需要と入荷のぶれに備える在庫

需要は毎日ぶれ、入荷も遅れることがあります。そのぶれを吸収するクッションが安全在庫です。ぶれが大きい商品ほど厚く、安定している商品ほど薄くてかまいません。全商品に一律の余裕を積まずに、商品ごとのぶれ幅に応じて差をつけます。統計的には、需要のばらつき(標準偏差)とリードタイム、そして「どこまで欠品を許容するか」というサービス率を掛け合わせて安全在庫を決めます。サービス率を95%から99%に上げれば欠品は減りますが、そのぶん抱える在庫は増えます。

式にすると次のようになります。表計算で出せる範囲です。

  • 安全在庫 = 安全係数 × 需要の標準偏差 × √リードタイム(日数)
  • 安全係数は、許容する欠品の確率(サービス率)で決まります。サービス率90%なら約1.28、95%なら約1.65、99%なら約2.33です
  • 需要の標準偏差は、直近3〜6ヶ月の日次出荷数を表計算のSTDEV関数に入れれば出ます

たとえば1日平均10個・標準偏差4個・リードタイム14日の商品でサービス率95%を狙うなら、安全在庫は1.65×4×√14≒25個。発注点は「リードタイム中の需要140個+安全在庫25個=165個」となります。サービス率を99%に上げると安全在庫は35個に増え、そのぶん在庫金額も増えます。どのサービス率を選ぶかは、商品の粗利と、欠品したときの失注や取引先への影響の大きさで決めます。

発注から入荷までのリードタイムを時間軸で示し、発注点がリードタイム中の需要と安全在庫の合計で決まることを表した図
在庫が発注点を割った瞬間が「予兆」。欠品はその時点で発注しなければ確定する

予兆をどう掴むか

出荷ペースの変化率を見る

在庫の残数を見ているうちは予兆を掴めません。予兆を示すのは出荷ペースの変化です。たとえば直近7日の出荷が過去4週平均の1.5倍になっていれば、発注点自体を引き上げる必要があります。残数は同じでも、減る速さが変われば欠品までの残り日数は一気に縮みます。

発注残と入荷予定をセットで見る

手元在庫が発注点を割っていても、明日100個入荷するなら問題ありません。一方で、発注済みでも入荷が遅れていれば欠品の危険があります。手元在庫・発注残・入荷予定日の3点セットで見て初めて、予兆は正しく読めます。

AIによる需要予測の現在地

近年は、季節性・曜日パターン・トレンドを学習して需要を予測するAIが実用段階にあります。定番品や回転の速い商品では、人の経験則より安定した精度を出しやすい分野です。ただし万能ではありません。販売実績の少ない新商品や、たまにしか動かないロングテール品は、どんな手法でも予測が難しい商品です。AIには定番品の発注量の提案を任せ、担当者は新商品や例外品の判断に時間を使う、という分担が向いています。

在庫削減の指示とAI予測の提案には、2つ注意点があります。1つ目は、「在庫を減らせ」という号令を出すと、担当者は欠品を恐れて安全在庫を厚くするか、削りすぎて欠品を増やすかのどちらかに振れる点です。減らす対象は動きの遅い在庫に絞り、商品ごとに目標を決めます。2つ目は、「AIを入れれば欠品ゼロ」という提案です。予測が当たりやすいのは実績の厚い定番品で、人の経験でもある程度当たる領域です。新商品や季節の立ち上がりはAIでも外れるため、精度の高さより、外れたときに早く気づける仕組みがあるかで提案を比べてください。

実務チェックリスト

  • 主要商品のリードタイムを仕入先ごとに一覧化しているか(更新は年2回以上)
  • 売上上位2割の商品に発注点を設定し、割った日に通知が飛ぶ仕組みがあるか
  • 直近7日の出荷ペースと過去4週平均を比較できるか
  • 手元在庫・発注残・入荷予定日を1つの画面で見られるか
  • 欠品が起きたとき、原因(需要増・入荷遅延・発注忘れ)を記録しているか

このチェックリストの多くに当てはまらない場合、受注・発注のデータが紙やFAX、担当者の記憶に散らばっている可能性が高いです。予兆管理は、日々の出荷・発注が数字として残っていて初めて機能します。受発注を紙から移す取り組みは、予兆管理の土台づくりにもなります。業務用厨房器具卸の江部松商事は、FAXで届く発注書をAI-OCRで読み取って販売管理システムへの入力を自動化し、受注処理の作業時間がほぼ半減したと紹介されています(LINE WORKS OCRの導入事例)。

商品ごとの動きの見方は売れ筋・死に筋分析、拠点ごとの数字のそろえ方は多店舗経営の数字管理が参考になります。

なお、「手元在庫」の数字が現物と合っていなければ、発注点の計算も予兆の判断も狂います。現物と帳簿を合わせる棚卸の手間は、実地棚卸(現物確認)をAI画像認識で効率化する方法にある手順で減らせます。

欠品したときに記録しておく5項目

欠品対応で抜けやすいのが、起きた後の記録です。記録がないと毎回「運が悪かった」で終わり、同じ欠品を繰り返します。次の5項目を1行で残すだけで、3ヶ月後には原因の偏りが見えます。

  • 商品と欠品した日数(何日間、注文を受けられなかったか)
  • 原因の区分:需要増/入荷遅延/発注忘れ/数量誤り/在庫数のズレ(帳簿と現物の差)
  • 失注した数量と金額(分かる範囲で。分からなければ問い合わせ件数でも可)
  • 代替提案をしたか、その結果
  • そのとき発注点・安全在庫がいくつだったか

3ヶ月分たまったら、原因の区分別に件数を数えてください。「発注忘れ」が多ければ通知の仕組みの問題、「在庫数のズレ」が多ければ棚卸と入出庫記録の問題であり、いずれも需要予測を導入しても解決しません。需要予測の導入は、原因の内訳を確かめてから検討します。

予兆管理を始める最小ステップ

欠品予兆の管理を全商品で一度に始めると、設定と確認の手間で止まります。対象を絞って運用の型を作り、そのあとで範囲を広げます。

  • ABC分析で対象を絞る:多くの商流では売上上位2割前後の商品が売上の大半を稼ぐ(いわゆるパレートの傾向)。このAランクに絞って発注点を設定すれば、少ない手間で売上への影響が大きい欠品を防げる
  • 発注点を決める:リードタイム(発注してから届くまでの日数)中に売れる量+安全在庫で発注の線を引く
  • 動きの遅い在庫も見る:欠品と同時に、過剰在庫も洗い出す
  • 実績が溜まったら予測へ:季節性や曜日傾向が見えてきたら需要予測に進む

完璧な予測は要りません。「そろそろ切れる」に事前に気づければ、慌てた発注や機会損失は減ります。主力商品から、予兆が見える状態を作ってください。

出荷・在庫・発注残のデータが販売管理システムと表計算に分かれている場合は、売上上位2割の商品について発注点と出荷ペースを1つの表で見られるようにする作業を、awaiが手伝えます。

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よくある質問

Q. 欠品はどうすれば防げますか?
A. 棚がゼロになってから気づくのでは間に合いません。発注してから届くまでの日数(リードタイム)の分だけ前に、欠品は実質的に決まっています。対策は、①主要商品のリードタイムを仕入先ごとに一覧化する、②発注点(リードタイム中の需要+安全在庫)を設定する、③発注点を割った日に通知が飛ぶ状態を作る、の3つです。最初は売上上位2割の商品に絞って構いません。
Q. 安全在庫はどう計算しますか?
A. 安全在庫=安全係数×需要の標準偏差×√リードタイムで求めます。安全係数は許容する欠品確率(サービス率)で決まり、95%なら約1.65、99%なら約2.33です。需要の標準偏差は直近3〜6ヶ月の日次出荷数から表計算のSTDEV関数で出せます。1日平均10個・標準偏差4個・リードタイム14日でサービス率95%なら、安全在庫は約25個、発注点は約165個という計算になります。
Q. 需要予測のAIは中小企業でも使えますか?
A. 過去の出荷実績があれば一定の予測は可能ですが、導入の前に欠品の原因を確認してください。原因が「発注忘れ」や「帳簿と現物の在庫のズレ」であれば、需要予測を入れても欠品は減りません。予測が当たりやすいのは実績の厚い定番品で、新商品や季節の立ち上がりはどの手法でも外れます。導入するなら、外れたときに早く気づける仕組みと組み合わせてください。
Q. 過剰在庫も同時に減らせますか?
A. 減らせます。発注点と安全在庫を商品ごとに決めると、ぶれの大きい商品は在庫を厚く、安定した商品や動きの遅い商品は薄くでき、在庫の配分が変わります。一律に在庫を減らす指示は欠品を増やすため、動きの遅い在庫を一覧にして、その商品の発注点と発注量を下げる方法が安全です。

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