公開日: 2026.06.11 / 最終更新日: 2026.10.21
売れ筋・死に筋分析のやり方|ABC分析と交差比率の5ステップ
売れ筋・死に筋分析のやり方を5ステップで説明します。商品別の売上と粗利でABC分析を2回行い、交差比率(粗利率×在庫回転率)で在庫効率を測って候補を挙げ、商品の役割を確かめてから処分方法を決める手順です。
売れ筋・死に筋は、商品別の売上と粗利でそれぞれABC分析を行い、交差比率(粗利率×在庫回転率)で在庫効率を測って見分けます。売上・粗利・在庫の3つの数字を並べると、よく売れているのに儲かっていない商品と、目立たないが粗利を稼いでいる商品を区別できます。担当者の感覚で品揃えや仕入れを決めると、前者を増やし、後者を切ってしまうことがあります。
作業は表計算ソフトで進められ、データの準備から処分の決定、四半期ごとの定例化までの5段階に分かれます。各ステップには、作業が止まりやすい箇所とその避け方を添えました。
全体像:5つのステップ
- STEP1:商品別の売上・粗利・在庫データを揃える
- STEP2:ABC分析で「売上の顔ぶれ」と「粗利の顔ぶれ」を分けて見る
- STEP3:交差比率で在庫効率を測り、死に筋の候補を挙げる
- STEP4:死に筋候補を機械的に切らず、役割を確認してから処分を決める
- STEP5:四半期ごとの定例に組み込み、一回きりで終わらせない
STEP1:商品別の売上・粗利・在庫データを揃える
分析の材料は3つ。商品別の売上高、商品別の粗利、商品別の平均在庫です。期間は季節性をならすため、最低でも直近6ヶ月、できれば12ヶ月分を用意します。
このステップで作業が止まる原因の多くは、商品コードの不統一です。同じ商品が販売システムと在庫システムで別のコードになっていたり、規格違いが同じコードに混ざっていたりすると、集計結果を信用できません。
作業の手順としては、①販売システムから商品別の売上・売上原価を期間指定で書き出す、②在庫システムから期首・期末の在庫金額を書き出す、③商品コードで結合する、の3つです。①②が別システムでコードが揃っていない場合は、売上上位100商品に絞って手で対応表を作れば、次のステップに進めます。全商品のコードを揃えてから始めようとすると、分析に入る前に手が止まります。
STEP2:ABC分析は「売上」と「粗利」の2回やる
ABC分析とは、商品を売上の大きい順に並べ、累計で全体の7割を占めるまでをA、9割まででB、残りをCと区分する手法です。区切りは7割・9割のほか、8割・95%とする方法もあります。多くの場合、上位2割ほどの商品が売上の大半を占めます。
表計算では、商品別の売上を大きい順に並べ替えたうえで、次の列を足すと区分できます。
- 売上構成比 = その商品の売上 ÷ 全商品の売上合計
- 累計構成比 = 1位からその商品までの売上構成比の合計
- 区分 = 累計構成比が70%以下ならA、90%以下ならB、それ以外はC
- 粗利額でも同じ3列を作り、売上の区分と横に並べる
売上の分析で終えると、商品ごとの儲けの差が見えません。粗利額でも同じ分析を行い、2つの結果を突き合わせてください。売上ではAなのに粗利ではCという商品は「よく出るが儲からない商品」で、値付けか仕入条件を見直す対象です。反対に、売上ではBでも粗利でAに入る商品は、図の「静かな稼ぎ頭」にあたります。
STEP3:交差比率で「在庫の働き」を測る
交差比率は、粗利率に在庫回転率(一定期間に在庫が何回入れ替わったか)を掛けた指標です。在庫に投じたお金が、一定期間にどれだけの粗利を生んだかを表します。粗利率が高くても回転が極端に遅い商品は、資金を倉庫に寝かせています。
計算式は次の3つです。
- 在庫回転率 = 期間の売上高 ÷ 平均在庫金額(平均在庫は期首と期末の平均で十分です)
- 粗利率(%) = 粗利 ÷ 売上 × 100
- 交差比率 = 粗利率(%) × 在庫回転率
数値にすると、感覚と違う結果が出ることがあります。たとえば粗利率30%で在庫回転が年6回の商品は交差比率180、粗利率50%でも回転が年1回の商品は交差比率50です。粗利率で比べると後者が上ですが、在庫の働きで見ると前者が3倍以上の粗利を生んでいます。「高粗利だから残す」と判断した商品が、在庫資金を固定させている例はよくあります。交差比率の水準は業種や商品カテゴリで異なるため、同じカテゴリの商品同士で比べてください。
交差比率が低く、売上・粗利のABC分析でもC区分に沈む商品が、死に筋の有力候補になります。発売直後の商品や、意図的に在庫を厚くした商品まで機械的に死に筋と判定しないよう注意してください。数字で挙げるのは候補までにとどめ、判定はSTEP4で行います。
STEP4:死に筋候補は「役割」を確認してから切る
候補に挙がった商品について、数字に表れない役割を確認します。主力商品と併せて買われる付属品ではないか。特定の重要顧客のための品ではないか。品揃えの幅を見せる役割はないか。役割が確認できなければ、値下げ処分・仕入停止・自然消化のいずれかを決め、決めた期日で実行します。「いつか売れるかもしれない」と保留にすると、棚と資金が空かないまま次の四半期を迎えます。
死に筋と決めた後、どう処分するか
「切る」と決めても、現物は残ります。処分の選択肢は4つで、どれを選ぶかで手残りも会計上の扱いも変わります。
| 方法 | 手残り | 向いている状況 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 値下げして売り切る | 原価割れでなければ最も有利 | 需要は細いが存在する。棚を空けたい | 値下げ幅を決めずに小出しにすると、結局売れ残る |
| セット・おまけとして付ける | 単体では売れない在庫を動かせる | 主力商品と併売できる | 主力の値引きと受け取られない見せ方が必要 |
| 仕入先への返品・引き取り交渉 | 条件次第で原価回収 | 仕入先との継続取引がある | 交渉できるのは通常、入荷から一定期間内。早いほど通る |
| 廃棄・処分 | 手残りはないが保管費が止まる | 品質劣化・廃番で売れる見込みがない | 廃棄の事実を証憑として残す。処理の扱いは顧問税理士に確認する |
判断の目安は、その在庫を保管し続ける費用(倉庫代・棚のスペース・棚卸の手間)が、値下げによる損失を上回るかどうかです。保管費を計算に入れずに持ち続けると、棚と資金が塞がる損失が、値下げで生じる損失を上回ることがあります。
STEP5:四半期ごとの定例にする
売れ筋・死に筋は入れ替わります。一度きりの大掃除で終わらせず、四半期に一度、同じ手順で見直す定例に組み込んでください。定例化を妨げるのは集計作業の重さです。初回にExcelで数日かかった集計が毎回発生すると、担当者の負担になって定例が続きません。
売れ筋・死に筋分析でよくある3つの失敗
手順を知っていても、運用の段階で次の3つの失敗が起きます。
- 数字のみで死に筋を切る。主力商品とセットで買われる付属品や、来店動機になっている商品まで消え、客数ごと落ちることがある。切る前に、その商品の役割を1行で言えるかを確かめる
- 売上のABC分析で終える。売上はAなのに粗利はCという商品は、扱うほど作業が増えて利益が残らない。粗利のABCと突き合わせ、値付けか仕入条件を見直す
- 分析を年1回の行事にする。売れ筋・死に筋は四半期ごとに入れ替わるため、年1回では入れ替わりに気づくのが半年以上遅れることがある
3つに共通する対策として、数字で行うのは候補の抽出までと決め、切る・残す・育てるの最終判断は、商品の役割を見て担当者と経営者が行います。この分担があれば、分析結果を品揃えの見直しにそのまま使えます。
集計に毎回数日かかる状態では、判断に使う時間が残りません。販売・在庫・会計のデータを書き出し、商品コードで結合する作業を自動化すれば、経営者は「切る・残す・育てる」の判断に時間を使えます。
分析結果を仕入・売り場の担当者にどう伝えるか
数字で候補を絞り込んでも、仕入や棚割りに反映するのは担当者です。分析結果を一方的に「この商品は死に筋だから切ります」と伝えると、担当者の感覚と数字がぶつかり、次回から協力を得られなくなります。
結論を伝える前に、数字の見方を共有してください。売上と粗利のマトリクスや交差比率の考え方を、担当者と同じ表を見ながら話す場を作ると、「なぜこの商品が候補に挙がったか」を担当者自身が説明でき、切る・残すの合意が早く得られます。
結果を伝える場も、四半期の分析と合わせて定例にします。担当者ごとに個別で説明していると理解にばらつきが出て、決めた処分が実行されないまま残ります。
取引先ごとの利益を見たい場合は取引先別の実質収益の出し方、売れ筋の欠品を防ぎたい場合は欠品対策の予兆管理と発注点の計算式も参考になります。
四半期ごとの集計を毎回手作業で作っている場合は、販売・在庫・会計のデータを商品コードで結合する部分の自動化をawaiが手伝えます。複数のシステムにまたがる経営データを横断して見たい場合は、経営統合BIのawai Compassも選択肢になります。
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- Q. 売れ筋・死に筋分析は何から始めればいいですか?
- A. 商品別の売上・粗利・平均在庫の3つを、直近6〜12ヶ月分そろえるところからです。そのうえで売上の大きい順に並べ、累計で7割までをA・9割までをB・残りをCに区分します(ABC分析)。続けて同じ分析を粗利額でも行い、2つの区分を突き合わせます。売上ではAなのに粗利ではCという商品が、販売の手間に見合う粗利を生んでいない商品です。
- Q. 死に筋はすぐ切るべきですか?
- A. 数字だけで判断しないでください。主力商品と同時に買われる付属品、特定の重要顧客のための品、品揃えの幅を見せる商品など、数字に表れない役割を持つものがあります。判断の手順は、①交差比率とABC区分で候補を挙げる、②その商品の役割を1行で説明できるか確認する、③説明できなければ値下げ・セット化・返品交渉・廃棄のいずれかを期日付きで決める、です。保留にする場合も、再判定の期日を決めてください。
- Q. 現場の感覚と数字がずれるときは、どちらを信じればいいですか?
- A. どちらか一方を選ぶ必要はありません。最初に数字で事実を確かめ、そのうえで担当者の感覚と突き合わせます。ずれの原因の多くは、担当者が見ている「よく出る」が販売数量の話で、数字が示しているのが粗利や在庫効率の話という視点の違いです。数量・粗利・交差比率を1枚の表に並べて見せると、どの指標の話をしているかがそろいます。
- Q. 交差比率はどう計算しますか?
- A. 交差比率=粗利率(%)×在庫回転率です。在庫回転率は期間の売上高÷平均在庫金額で求めます。たとえば粗利率30%で年6回転の商品は交差比率180、粗利率50%でも年1回転なら50となり、粗利率が高いほうが在庫としては働いていないことが分かります。表計算に3列を足せば出せるため、最初は売上上位100商品で試してください。
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