公開日: 2026.03.04 / 最終更新日: 2026.10.21

FAX受注の自動化はどこまで可能か|AI-OCRの方法と費用

FAX受注の自動化は、AI-OCRでの読み取りと基幹システムへの登録までを機械に任せ、得意先ルールとの確認は人が残す形が到達点です。3工程の分け方とSTEP1〜5の進め方、AI-OCRと受発注SaaSの費用の目安が分かります。

FAX機から出た注文書が矢印でノートPCの一覧表に変わり、机には注文書の山が積まれた自動化の情景イラスト

FAX受注の自動化は、紙の発注書の「読み取り」と基幹システムへの「登録」まで、AI-OCRとシステム連携でかなりの部分を機械に任せられます。得意先ごとのルールと突き合わせる「確認」は残り、読み取りが曖昧な項目を人が最終チェックする形で入力工数を減らします。費用は、AI-OCRのクラウドサービスが月数万円台からで、基幹連携まで含めると要件次第で幅が出ます。

朝、複合機に溜まった発注書を一枚ずつめくり、得意先コードを思い出しながら打ち込む作業は、今も多くの卸売業で毎日続いています。発注方法を決めるのは取引先なので、自社の都合でFAXをやめてもらうのは難しいのが実情です。検討すべきは「FAXが届いたあとの作業をどこまで機械に任せるか」で、着手前に確かめる3問と、STEP1〜5の手順に分けて進め方を示します。

FAX受注の仕事は3つの工程に分解できる

FAX受注と一口に言っても、実際にやっている作業は3つに分かれます。この分解が自動化の設計図になります。

  • 読み取り:紙の発注書から品名・数量・納品日などの情報を拾う
  • 確認:得意先ごとの略称や特売単価、欠品時のルールと突き合わせる
  • 登録:基幹システムや販売管理ソフトに受注データとして入力する

3工程のうち「読み取り」と「登録」は技術でかなり自動化できます。「確認」は完全にはなくせないため、人が最終チェックする工程を残したうえで手間を減らします。この考え方でSTEP1から順に進めます。なお、紙のカタログや価格表を商品データにしたい場合は紙・PDF帳票をAIで商品データ化する方法が、請求書や納品書の読み取りは請求書・帳票のAI読み取り自動化|AI-OCRの導入方法と費用の手順が参考になります。

着手前に、自動化の効果が大きい会社かを3問で確かめる

STEPに入る前に、自社が自動化の投資を回収しやすい状況かを見極めます。次の3問のうち2つ以上がYESなら、着手する価値が高い会社です。

  • Q1. FAX・電話の受注が1日20件を超えているか? → 毎日の反復量が多いほど、自動化の投資回収は速い
  • Q2. 受注入力に事務が1日合計2時間以上使っているか? → 月40時間・年約480時間が目安で、人件費に換算すると効果が見えてくる
  • Q3. 受注が特定の1〜2名に集中していないか? → 集中しているなら、自動化は属人化リスクの解消も同時に果たす

2つ以上YESなら、STEP1に進みます。受注が1日数件で担当も複数いるなら、当面は運用の工夫で足り、大がかりな自動化を急ぐ必要はありません。

STEP1:受注の現状を数える

最初にやるのは現状の計測です。1日に何枚のFAXが届き、何社から、何行の明細があり、入力に合計何時間かかっているかを数えます。1〜2週間、正の字でカウントするだけで十分です。この時間に人件費を掛けた金額が、自動化に投じてよい予算の上限になります。

計測期間には繁忙期を含めます。食品卸では年末やお盆前に受注量が大きく増えます。平常時の数字で設計すると、最も処理量が多い時期に確認作業が追いつかなくなります。

STEP2:帳票のパターンを分類する

届くFAXは1枚ごとに別物に見えて、実際は数パターンに集約されます。取引先指定の発注書、自社が配った注文用紙、手書きのメモに近いもの。取引先別に「様式が固定か」「印字か手書きか」「明細行数」を一覧にしてください。上位2〜3割の取引先で受注枚数の大半を占めているのが普通です。

最初から全パターンを自動化しようとすると、帳票の設定と検証に時間がかかり、稼働が遅れます。様式が固定で印字の発注書から着手し、手書きの崩れた帳票は当面は人が処理します。対象を絞るほど、本番稼働が早まります。

FAX受注自動化のSTEP1からSTEP5までの手順と各ステップのつまずきポイントを整理した図
自動化はSTEP1〜5の順番で進める。各STEPに典型的なつまずきがある

STEP3:AI-OCRと人の確認フローをセットで設計する

読み取りの主役はAI-OCRです。OCRとは紙の文字をデータに変換する技術のことで、AIを組み合わせた現在の方式は、レイアウトが多少違う帳票でも項目を推定して読み取れます。ただし手書きやかすれでは精度が落ちるため、読み取り結果を人が画面で確認・修正する工程(Human-in-the-loopと呼びます)を必ず挟みます。

「精度99%」という数字は、そのまま受け取らないほうが安全です。1文字単位の精度が99%でも、20項目ある発注書1枚がすべて正しく読める確率はもっと低くなります。それでも、ゼロから打ち込む作業が機械の下書きを直す作業に変わるため、入力時間は短くなります。精度は自社の帳票次第なので、導入前に実物の注文書で試します(検証の手順はAI-OCRの精度と検証手順にあります)。

LINE WORKSが公開している導入事例では、業務用厨房器具卸の江部松商事が、FAX発注書をAI-OCRで読み取って販売管理システムへ取り込む仕組みを作り、受注処理の作業時間がほぼ半減しています(2024年5月取材時点)。同社は発注数の多い得意先の様式から読み取り設定を作って対象を少しずつ広げ、読み取り結果と元のFAXを画面で並べて確認する入力画面も担当者の意見を聞いて作り込みました。ツールを入れただけで同じ結果になるとは限らず、確認の工程まで設計して得た成果です。

STEP4:基幹システムへの登録をつなぐ

読み取ったデータを人が基幹システムに再入力していたら、自動化の効果は半減します。CSV取込やAPI連携(システム同士がデータを直接受け渡す仕組み)で、確認済みデータがそのまま受注登録される流れまでつなぎます。障害になりやすいのは、古い基幹システムに取込機能がない場合です。この場合は画面入力を代行するRPAでつなぐか、受発注の仕組みごと見直すかの判断になります。

STEP5:取引先を巻き込み、併走期間を設ける

自社の注文用紙を読み取りやすい様式に刷り直して配り、Web発注に切り替えられそうな取引先へは案内を出します。ここまでやると自動化率がもう一段上がります。切り替え直後の1〜2ヶ月は従来の目視処理と併走し、突合して差異ゼロを確認してから旧手順を止めてください。いきなり切り替えて誤出荷を出すと、社内の信頼を失い、計画全体が止まりかねません。

FAX自動化の計画で外せない3つの注意点

計画を立てる前に、次の3点を社内で共有します。ここが曖昧なまま進めると、途中で方針がぶれます。

  • FAXをゼロにする目標は多くの卸で実現しない。発注方法を決めるのは取引先で、移行を強制すれば取引が離れる。届いたFAXを社内でデータ化する方針で計画を立てる
  • 「全自動」を前面に出す提案には、確認工程をどう設計するかを質問する。手書き・かすれの混じる実帳票で全自動を組むと、読み違いがそのまま誤出荷につながる。人の最終確認を挟むHuman-in-the-loopを標準にする
  • 補助金を基準に道具を選ばない。受発注ソフト・業務効率化ツールは対象になり得るが、対象経費は制度ごとに異なる(申請年度の公募要領で確認する)。道具は業務の流れから選び、補助金は条件が合えば使う

費用はどう考えるか

費用の桁を把握します。紙をそのままデータ化するAI-OCRのクラウドサービスは月数万円台からです。取引先からの注文をWeb発注に移す受発注SaaSは、Bカートが月9,800円〜、CO-NECTが月0円〜(無料プランは受注件数などに制限あり)で、スマレジEC・B2B(旧・楽楽B2B)は問い合わせで見積もる形です(最新は各社の料金ページで確認してください)。基幹連携まで含めた個別構築は要件次第で幅が出ます。費用は次の4項目に分けると、見積もりを比べられます。

費用の項目中身金額が動く要因
AI-OCRの利用料クラウドサービスの月額と、読み取り枚数に応じた従量分月間のFAX枚数・1枚あたりの明細行数
帳票の設定取引先の様式ごとに読み取り項目を登録する作業様式のパターン数・手書きの比率
確認画面と運用設計読み取り結果を人が直す画面と、得意先別ルールとの照合略称・特売単価などの例外ルールの量
基幹システムとの連携CSV取込・API連携・RPAのいずれかで受注登録までつなぐ既存システムの取込機能の有無

このうち金額の差が出やすいのは、帳票の設定と基幹連携です。様式が多く、取込機能のない基幹システムを使っている会社ほど、初期の作業量が増えます。

投資額の上限は、見積もりを取る前に決めます。STEP1で測った「受注入力に消えている時間×人件費」から逆算した上限を持って相談すると、話が早く、複数社の比較もできます。事務担当1人分の工数が浮くなら、その人の給与と社会保険料を合わせた額が毎月の原資になります。読み取ったデータは受注実績として貯まるため、取引先別の採算や受注傾向を数字で見る土台にもなります。

まとめ

FAX受注の自動化は、受注の量と入力時間を数え、様式が固定の発注書からAI-OCRと確認画面を組み、基幹システムへの登録までつなぐ手順で進めます。得意先ルールとの確認は人が受け持ち、1〜2ヶ月の併走で差異がないことを確かめてから旧手順を止めます。投資額は、浮く入力時間から逆算した上限の範囲で決めます。

電話受注には、音声で情報が残らないという別の課題があります。復唱だけでは聞き間違いが消えない理由と記録が残る受け方は電話受注の聞き間違いをなくす方法|復唱で消えない理由と対策に対策があります。得意先の発注方法をFAXから受発注SaaSやECへ移す段階では、卸売のEC移行は並走で進める|既存取引を壊さない3群の分け方の進め方で既存の取引を守れます。受発注の仕組み全体を見直すなら、受発注システムの選び方が判断の材料になります。

STEP1で数えた受注枚数と入力時間が手元にあれば、どの取引先の様式から読み取りを始め、基幹システムへどうつなぐかの検討をawaiが手伝えます。

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よくある質問

Q. 手書きのFAX発注書でも自動化できますか?
A. 手書きは活字より読み取り精度が下がりますが、読み取りと人の確認を組み合わせれば日々の受注処理で運用できます。読み取りが曖昧だった項目に限って人が確認する形にすると、手書きが混じっても誤りを防げます。自社の帳票でどの程度読めるかは、実物10〜20枚で検証すれば分かります。実帳票での検証に応じない製品は、候補から外して構いません。
Q. 得意先にFAXをやめてもらう必要がありますか?
A. ありません。得意先は今までどおりFAXを送り、受け取った側でデータ化します。発注方法を変えないほうが定着します。「Web発注に切り替えてください」と依頼すると、相手の業務を変えることになり、取引に影響しかねません。FAXを残したまま社内の処理を変えられる点が、この方式の利点です。
Q. すべての受注を自動化できますか?
A. できません。定型的なFAX・メールは大半を処理できますが、電話や特殊な依頼は人が扱います。目標は人手を大幅に減らすことに置きます。着手前に例外の比率を測り、例外が全体の5割を超えるようなら、自動化の前に取引先ごとの書式や記載ルールをそろえる交渉から始めるほうが成果が出ます。

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