公開日: 2026.03.27 / 最終更新日: 2026.10.21

受注事務の人手不足対策|増員・派遣・BPO・自動化をコストで比較

受注事務の求人に応募が来ないときの対策として、増員・派遣・BPO・自動化の4つを費用の出方と繁忙期への強さで比較。転記作業を減らしてから人を補う判断の手順も示します。

求人票を立てた机の前に大きな空席の椅子があり、残された業務の紙束を前に肩をすくめる採用難の情景イラスト

受注事務の欠員は、人で埋める前に業務量を減らすほうが、費用と定着の両面で有利です。判断の基準は、その仕事が「判断が必要な仕事」か「転記の仕事」かです。受注事務の作業時間の多くはFAXや電話の内容を基幹システムへ転記する作業で占められ、転記はAI-OCRや音声認識と人の確認を組み合わせれば、多くを仕組みに移せます。

増員を否定するわけではありません。転記の多い業務のまま人を採ると、採用費と教育期間をかけて「機械に移せる仕事」を新人に教えることになります。受注事務の人件費は一般的な目安で月25〜35万円程度で、毎月続く固定費です。業務を軽くしてから足りない分を人で埋めれば、増える固定費を最小限に抑えられます。増員・派遣・BPO・自動化の4案は、費用の出方と繁忙期への強さで差がつき、どれを選ぶかは求人票を書く前の5つの確認で決められます。

なぜ受注事務の採用はここまで難しくなったのか

生産年齢人口の減少という大きな流れに加えて、受注事務という仕事の中身が採用市場で不利になっています。FAXの解読、電話の聞き取り、基幹システムへの手入力。求職者から見れば「覚えることが多いのに評価されにくい仕事」に映ります。辞める理由として、待遇のほかに「ミスが許されない緊張が続くのに、仕事の価値が伝わりにくい」ことが挙がる場合もあります。

このため採用難は、募集の出し方の問題であると同時に、業務設計の問題でもあります。仕事の中身を変えない限り、採れても定着しにくい状態が続きます。

4つの選択肢をコストと持続性で比べる

欠員への打ち手は、大きく分けて次の4つです。費用の出方、立ち上がりの速さ、繁忙期への対応、導入後に残るリスクを並べます。

選択肢費用の出方立ち上がり繁忙期への対応残るリスク
正社員の増員月25〜35万円程度の人件費に、採用費と社会保険が加わる固定費遅い。戦力化まで3〜6か月の教育期間がかかる残業か、さらなる増員で対応する転記中心の業務のままだと属人化が再生産される
派遣・パート時間単価で変動する。入れ替わりのたびに教育の手間がかかる速い。ただし例外の多い受注業務は習熟に時間がかかる一時的な増員で吸収しやすい入れ替わりのたびに例外ルールの教育をやり直す
BPO(受注業務の外部委託)委託費が業務量に比例して増える取引先ごとの例外ルールの引き継ぎに時間がかかる繁忙期ほど委託費がかさむ社内にノウハウが残らない
自動化(AI-OCR・音声認識+人の確認)初期の設計費と運用費。処理量が増えても費用が比例して増えにくい設計と試行に一定の期間がかかる人を増やさず、確認作業の増加で吸収できる読み取り結果の確認役と例外対応の担当者は残す必要がある
受注事務の欠員に対する4つの選択肢の比較(人件費は一般的な目安)
増員・派遣・BPO・自動化の4案を立ち上がり速度・継続コスト・属人化リスク・繁忙対応の4項目で比較した表
4つの選択肢の比較。単独ではなく「自動化+最小限の人」の組み合わせが現実解

4案の差がとくに表れるのが、繁忙期への耐性です。人による処理は繁忙期に残業か増員でしか対応できませんが、自動化された処理は受注が1.5倍になっても確認作業が増えるだけで済みます。卸売業のように季節波動の大きい業種ほど、この差は大きくなります。

4案の「隠れコスト」と向き不向き

月々の費用を並べても、4つの選択肢の優劣は決まりません。それぞれに表に出にくい「隠れコスト」があり、自社の状況によって向き不向きが分かれるからです。

  • 正社員の増員が向くのは、判断業務の比率が高く受注量が今後も安定して伸びる会社。ただし採用費と社会保険、戦力化までの3〜6か月の教育期間が隠れコストになる
  • 派遣・パートが向くのは、産休の穴埋めや一時的な繁忙への対応。恒常的な戦力にすると、入れ替わりのたびに例外ルールの教育をやり直すことになる
  • BPO(外部委託)が向くのは、業務が標準化済みで例外の少ない会社。取引先ごとの例外の引き継ぎが重く、社内にノウハウが残らない点が隠れコスト。委託費も業務量に比例して増える
  • 自動化が向くのは、転記の比率が高く季節波動の大きい会社。初期の設計負荷はかかるが、確認役として最小限の人を残せば処理量が増えても費用が比例しにくい

実際にはどれか一つに寄せるより、チャネルや業務ごとに割り当てるのが現実的です。判断の重い取引先対応は人に残し、転記・入力は自動化に移し、突発的な繁忙は派遣で吸収します。それぞれの強みが生きる業務に割り当てると、欠員のたびに採用市場で人を探し続ける状態から抜け出せます。

自動化で目指すのは「採らずに済む体制」

自動化しても人はゼロになりません。AI-OCRや音声認識の読み取り結果は人が確認する前提ですし、取引先とのやり取りや例外対応は人の仕事として残ります。目指すのは、複数人で分担していた転記作業を、少人数の確認作業にまとめる体制です。欠員が出ても補充せずに吸収できれば、欠員のたびに採用活動に追われなくなります。この点が、ほかの3案との大きな違いです。

たとえば受注入力に1日6時間かかっている事務を想定すると、確認中心の体制に変われば同じ業務が2時間前後に収まる余地があります。浮いた4時間は、請求業務の巻き取りや取引先フォローといった、これまで手が回らなかった仕事に充てられます。担当者の人数は同じでも、受け持つ仕事の中身が変わります。

求人票を書く前にやる判断の手順

次の5つを上から順に確かめます。社内の担当者で1〜2週間あれば集められる数字です。

  • 受注事務の作業を1週間分書き出し、「判断が必要」「転記・定型」に仕分ける
  • 転記・定型の作業時間を月単位で合計する。月40時間を超えていれば、増員より先に自動化を検討する目安になる
  • 受注1件あたりの処理時間×月間件数×人件費単価で、削減できる事務コストを出す。これが仕組みに投資できる上限の根拠になる
  • 繁忙月と平常月の残業時間を並べ、繁忙期にどの程度人手が足りないかを確かめる
  • 転記を仕組みに移したあとに残る判断業務の量を見積もり、不足する分を増員か派遣で埋める

求人票の作成はその後でも遅くありません。「入力作業はシステムが行う職場です」と書けるほうが、求職者にも仕事の中身が伝わります。

打ち手を選ぶ前に確認する3つの注意点

  • 採用は、転記作業を減らしたあとに行う。業務設計がそのままだと、良い人が採れても同じ理由で辞めやすく、採用費と教育期間が無駄になる
  • BPO(外部委託)を選ぶなら、取引先ごとの例外ルールを文書にしてから渡す。標準化されていない卸の受注業務をそのまま渡すと、引き継ぎに時間がかかり、委託後は社内で業務の中身を説明できる人がいなくなる
  • 自動化を人員削減の手段として導入すると、現場が抵抗して定着しにくい。目標は「欠員が出ても補充せずに吸収できる体制」に置き、担当者の仕事が転記から確認・例外対応へ移ることを導入前に共有する

どの案を選ぶ場合も、料金を比べる前に、判断の手順で出した事務コストの試算を基準にします。欠員が出てから慌てて検討するより、今の体制で業務が滞っていないうちに数字を出しておけば、4案を比べる時間を確保でき、急ぎの採用や割高な委託を避けられます。

本記事とあわせて、受注業務の属人化リスクや受発注システムの選び方もご覧いただくと全体像がつかめます。

求人を出すか仕組みに投資するかで迷っている段階なら、判断の手順の1〜3(作業の仕分け、転記時間の合計、事務コストの試算)の数字づくりをawaiが手伝います。

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よくある質問

Q. 人を雇うのと自動化、どちらが得ですか?
A. 受注量が今後も続く、あるいは増える見込みなら、採用より自動化のほうが、中長期のコストとリスクを抑えられることが多いです。判断は試算から始めます。受注1件あたりの処理時間×月間件数×人件費単価が、自動化に投資できる上限の根拠になります。あわせて、採用にかかる費用(募集・教育・定着までの期間)と、欠員が出たときに受注が止まるリスクも同じ土俵で比べます。
Q. 自動化すると今の担当者は不要になりますか?
A. 目的は、定型作業を減らして担当者を確認・例外対応・得意先対応に振り向けることにあります。実際、受注業務のうち仕組みに移せるのは転記・入力・照合までで、在庫の融通や納期の調整、取引先との関係に基づく判断は人に残ります。人員削減を目的に掲げると現場が抵抗し、導入が定着しにくくなります。「欠員が出ても補充せずに吸収できる体制」を目標に置くほうが、実態にも合っています。
Q. 繁忙期だけ増える受注にどう対応しますか?
A. 自動化した処理は受注量が増えても人手が比例して増えないため、繁忙期の残業や臨時増員を吸収しやすくなります。効果を測るときは、平常月ではなく繁忙月の残業時間で比べてください。繁忙期に差が出やすいため、平常月の数字で比べると投資対効果を小さく見積もってしまいます。

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